生体豚価格安定により生産の活発化を図るラオス


畜産は農業の主要部門

 ラオスの国土面積は23万7千平方キロ、その54%は森林であるが、森林の伐採
・焼畑による荒地が40%あり、環境保護対策が急がれている。国民の8割は農業
に従事しており、GDPに占める農業の割合は5割程度である。同国は、86年にベ
トナムのドイモイ(刷新)政策と同様の地方分権と民営化を中心とする政策に移
行し、96年までの間、年率7%以上の経済成長を遂げてきた。しかし、この経済
成長はタイへの輸出に支えられたものであったため、97年末のタイの通貨危機に
より同国の経済も一気に落ち込んだ。畜産は、農業GDPの4割を占めており、林
業が衰退する中にあって、同国経済における重要な存在となっている。同国の家
畜頭羽数は、2000年末現在で、水牛が約103万頭、牛が約110万頭、山羊・羊が約
12万頭、豚が約143万頭、鶏が約1,309万羽となっている。


肉豚価格はタイの市況に左右

 同国では、肉畜や食肉には30%、種畜には1%の関税を課しているが、中国、
ベトナム、カンボジア、ミャンマー、タイの5ヵ国に囲まれた内陸国で国境線が
長いことから、必ずしも十分な輸出入管理が行えない面がある。また、全人口約
550万人の約15%に相当する約80万人の人口を有する首都ビエンチャンの公式の
豚と畜頭数が1日当たり120頭(平均生体重70s)程度しかないことから、相当
数の非公認と畜が行われていると推定される。このため、価格政策は十分に機能
していないと考えられ、同国の肉豚生産者価格は、周辺国でも最大の輸出余力を
有するタイの市況に左右される面が大きい。


公営と畜場では、売買に公定価格

 ラオス農林省畜水局によれば、同国では、昨年、隣国タイにおけるチャロン・
ポカパン(CP)グループなど大手による豚の大量放出により、生体豚価格が大幅
に下落し、国内の養豚が危機に瀕していたが、タイ側の動きが落ち着きを取り戻
したことから、今年中盤に入って回復基調に転じている。同局は、畜産を北部諸
県の貧困および環境保護対策の柱にしたいとしており、生体豚市場の安定による
養豚の活発化を期待している。

 こうした中で、同国では、公営と畜場による豚の買い入れ価格を生体1s当た
り9千キップ(約120円:100キップ=約1.33円)、売り渡し価格を枝肉1s当た
り1万2千キップ(約160円)と定めている。同国最大で種雌豚約1,100頭を飼養
しているバニット農場によれば、公定買入価格の9千キップは、農家にとって損
益分岐点であるという。

 昨年は、タイの市況が大幅に下落したことの影響により、ラオス国内の肉豚生
産者価格も20%以上下落、生体1s当たり8千キップ(約106円)程度となり、
肥育農家の採算が取れなくなった。このため、それまで月間500頭程度出荷して
いたバニット農場の子豚の出荷頭数がほぼゼロになる事態が生じていた。しかし、
今年に入ってからタイの市況が持ち直し、ラオスの市況も9千キップ程度まで回
復している。


養豚の導入で貧困対策と環境対策の達成を目指す

 同国の北部山岳地帯は貧困であり、自家用の食料生産すら満足にできない状況
の中で、住民による無計画な焼畑農業により荒地が拡大している。このため、こ
の地帯に養豚などを導入して、住民の収入の確保と、定着化を図って、貧困対策
と環境保護対策を一挙に達成しようとしている。しかし、生産物を流通させるた
めの道路インフラなどが未整備であり、技術普及などに必要な資金も不足してい
ることから、遅々として進展していない。

 同局では、豚の市況が収益水準に安定したことで、国内生産の活発化につなが
ることを期待している。

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