米GAO、飲用乳の価格構造に関する報告を公表


98年の第1回レポートのフォローアップ、全米15都市を調査

 米国では、毎年約70億ガロン(約2,660万キロリットル:1ガロン=約3.8リッ
トル)の飲用乳が販売され、その市場規模は約220億ドル(約2兆7,720億円:1
ドル=126円)にも上っている。また、近年は、農家受取価格が低迷する(注:2
000年12月以降は回復傾向)一方、地域によっては、大型スーパーが不当な高値
で牛乳を販売しているといった問題が取りざたされるなど、農家受取価格と小売
価格とのかい離が酪農関係者の間で懸念されている。

 こうした中で、米会計検査院(GAO)は先ごろ、飲用乳の価格構造に関するレ
ポートを公表した。これは、酪農関係州選出の民主党上院議員2名の要請に基づ
くもので、98年に公表された第1回レポートのフォロー・アップという趣旨によ
るものである。今回も、飲用乳市場の約6割のシェアを占める乳脂肪分2%、1
ガロン容器入りの牛乳について、全米の主要15都市(前回は31都市)の地域を対
象に、生産・流通の各段階における価格調査が実施され、前回のレポートと同様
の実態にあることが明らかにされた。


小売価格に占める割合は農家4割、メーカー3割、小売店2割

 レポートによると、牛乳の小売価格に占める生産・流通段階のそれぞれの割合
は、98年3月〜2000年9月の全米平均で、農家43%、酪農協5%、乳業メーカー
33%、小売店19%という内訳となっている。ただし、各都市間では、数値にかな
りのばらつきがある。例えば、ダラス地域(テキサス州)のように、「同期間中
に価格戦争があった」(米農務省)ため、小売店の取り分がマイナス21%と大き
く原価割れしたようなケースもあれば、ミネアポリス地域(ミネソタ州)のよう
に、農家の取り分が35%、乳業メーカー(32%)と小売店(30%)を合わせた分
が62%というダラス地域とはまったく逆のケースも見受けられる。


農家受取価格と小売価格の差が拡大、これらの価格相関は低いと分析

 一方、同期間中、総じて農家受取価格が大きく変動を繰り返す中で、15地域の
うちの12地域においては、小売価格は安定もしくは上昇傾向にあり、その中の9
地域においては、農家受取価格と小売価格の差が拡大している。

農家受取価格と小売価格の変化

 資料:GAO

 また、レポートでは、各段階における価格水準について、農家と酪農協、乳業
メーカーと小売店との間でそれぞれ高い相関関係が見られる一方、これらに比べ、
農家と小売店との間の相関は低いとも分析されている。


各小売店の販売戦略も小売価格の水準に影響

 GAOは、価格形成に影響を与える要因として、需給状況以外にも、生産・流通
コストや、連邦ミルク・マーケティング・オーダー制度をはじめとする政府の価
格政策の動向、市場の競争度合いなどを挙げている。特に、小売価格については、
消費者に対し、低価格店であることを印象付けるため

@ 牛乳の価格を低く設定する代わりに、他の商品への価格転嫁を行う(その逆
 もある)

A 近隣の他店における水準をにらみながら価格を設定する

 など、各小売店における独自の販売戦略によっても影響を受けると指摘してい
る(ただし、廉売防止のため、乳業メーカーや小売店に対し、コスト以下で牛乳
を販売することを禁止する州もある)。

 なお、牛乳・乳製品の生産・流通の各段階においても、市場の寡占化が進展し
ているが、これについては、販売パワーが高まり、価格が上昇するという見方と、
「規模の経済」によって、むしろ価格は低下するという見方の両論を紹介するに
とどめ、明確な結論は出されていない。

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