◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2001年第3四半期までの成牛と畜頭数を発表した。これに よると9月までのと畜頭数は加盟15ヵ国合計で1,881万1千頭と、前年同 期に比べ8.1%の減少となった。ここ数年のEUの成牛と畜頭数は、96年の牛 海綿状脳症(BSE)問題発生後に実施された対策が功を奏したことや、好調なEU 経済を背景とした牛肉消費の回復などを受けて、わずかながらも増加傾向にあっ た。しかし、2001年の成牛と畜頭数は、2000年末に発生したBSE問題の 再燃・拡大が肉牛価格を直撃し、96年以来の落ち込みを見せている。ただし、 ここ数ヵ月の動向として、EUの牛肉価格対策の実施や消費回復に向けた取り組み が功を奏し価格が上向きつつあることから、第3四半期は、第1四半期に記録し た前年同期比15.8%の減少に比べて7.7ポイントの改善となっている。 EUの成牛と畜頭数 資料:EU統計局
第3四半期の国別と畜実績を見ると、2001年2月に発生した口蹄疫問題の 拡大が尾を引くイギリスを除き、加盟各国とも増加傾向で推移している。中でも、 第1四半期実績で前年同期比を大きく下回ったフランス(第1四半期実績:▲1 2.6%)、ベルギー(同▲13.5%)、イタリア(同▲15.6%)は、いず れも第3四半期においては増加に転じるなどかなりの変化が表れている。第2四 半期以降の成牛と畜頭数については当初から、BSE問題拡大に伴う成牛価格の暴 落により農家保留を余儀なくされた肉牛が徐々に出荷せざるを得ない状況に置か れたため、需給動向に関わりなく増加するものと見られていたが、実際には予想 を上回るものとなっている。
と畜動向を占う上で重要なEUの平均成牛価格(市場参考価格)を見ると、20 00年9月(前年同月比▲18.6%)を底に上向きに転じている。2002月 2月は100kg当たり115ユーロ(約1万3,570円:1ユーロ=118円) と前年同月比6.4%高となった。平均130ユーロ(約1万5千円)台で推移 したここ数年の成牛価格と比べると、まだまだ低い水準ではあるが着実な回復と いえる。今回のBSE問題の発端となったフランスを始め加盟各国では、消費者の 不安感を取り除くための広報活動など独自の取り組みが行われ、消費回復に向け た動きが進められている。これらは、将来的に域内の牛肉消費回復につながるも のと見込まれることから、今後のと畜頭数の動向にも大きな影響を与えるとみら れる。 ◇図:成牛価格の増減率(対前年同月比:EU平均)◇
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