◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2001年第3四半期までの豚と畜頭数を公表した。これによ ると9月までのと畜頭数は、加盟15ヵ国合計で1億4,692万7千頭と前年 同期比1.8%の減少となった。EUの豚と畜は、98〜99年にかけての価格暴 落により、その後は一時的に若干の落ち込みを見せたが、好調なEU経済を背景と した需要回復を受けて、おおむね増加傾向で推移していた。また、2000年末 の牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大は、その後の豚肉消費拡大を加速させ、 豚肉価格も上昇を続けていた。このような好条件があったにも関わらず、200 1年第3四半期までの豚と畜頭数が減少した要因としては、同年2月に口蹄疫が 発生したイギリスでの減少の影響が挙げられる。イギリスの口蹄疫は、主に羊を 中心として発生したものであったが、40万頭強の豚が防疫・動物福祉のために と畜されたほか、家畜の移動制限などにより農家の出荷も停滞した。また、畜産 環境対策としての離農計画が進むオランダの減少も目立っている。これら2ヵ国 分での合計と畜頭数減少分は、前年同期比(イギリス:1〜12月、オランダ: 1〜11月)で5百万頭を超えている。 EUの豚と畜頭数 注:EU統計局
一方、EUの主要豚肉生産国であるデンマーク、ドイツについては、域内需給の 拡大を背景とした豚肉価格の上昇を受けて、と畜頭数はいずれも順調な伸びを見 せている。このうちデンマークについては、ポンド高で推移するイギリス向け輸 出の増加が目立ち、また、ドイツについてはロシア向け輸出の強化が増加の主な 要因とみられている。主要豚肉生産国の1つであるフランスが、環境規制などの 制約から大幅な頭数拡大が期待できない中で、デンマーク、ドイツの両国は、輸 出の伸びを背景に着実な生産の伸びが見込まれている。
堅調に推移した豚肉価格は、2001年第4四半期以降下げに転じている。2 002年2月現在のEU豚枝肉平均価格(市場参考価格)は、100kg当たり13 4ユーロ(約1万5,812円:1ユーロ=118円)と前年同期比で約2割安 となった。堅調に推移した豚肉価格が、結果的に消費者の豚肉離れを加速させ、 需給の緩和傾向をもたらした要因とされている。このような中で、EUは2月に入 り一部豚肉加工製品の輸出補助金引き下げを実施した。第4四半期以降のEU全体 の豚と畜頭数は、このような価格動向の下、当面減少傾向が続くものとみられる。 ◇図:豚枝肉価格の増減率(対前年同月比:EU平均)◇
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