口蹄疫発生が大きく響いた亜国の牛肉需給


肉牛飼養頭数は94年以降減少傾向で推移

 アルゼンチンの肉牛飼養頭数は、94年以降減少基調で推移しているが、20
01年の推定値は、2000年の4,867万頭を若干上回り4,885万頭になると農牧水産
食糧庁は発表した。

 牛と畜頭数は2000年が1,240万頭、2001年は1,144万頭と約96万頭減少し、枝肉
生産量はそれぞれ272万トン、246万トンと約26万トン減少した。2001年の枝肉生
産量の減少要因は、2001年3月の口蹄疫発生のため、EU、北米自由貿易協定地域
(NAFTA)、チリ、イスラエルなどの主要な輸出市場が閉ざされ、全体として去
勢牛のと畜頭数が減り、特に輸出向けの比較的体重の重い去勢牛のと畜割合が減
ったことにより、2001年の平均枝肉重量が前年を下回ったからである。

 また、と畜頭数の減少要因を更に詳しく見てみると、近年の飼養頭数減少に加
え、@一部の生産者が輸出解禁後の高値を期待し家畜を保留したこと、A従来、
輸出に向けられていた体重の重い去勢牛は国内向けでは買い叩かれるため、生産
者が出荷を手控えたことなどが考えられている。


口蹄疫の影響により輸出は大きなダメージを受ける

 2001年の牛肉輸出量は、国内での口蹄疫発生により、同年4月以降主要な輸出
市場が閉ざされたため、前年の34万トンから15万トンに大きく下落した(枝肉ベ
ース)。特にEU向け高級牛肉枠(ヒルトン枠)は、前年の約26,000トンを大きく
下回り5,400トン(製品ベース)となり、FOB輸出価格も前年の1kg当たり7.2ド
ル(約972円:1ドル=135円)から同5.2ドル(約702円)に下落した。また、
生鮮肉も前年の13万トンから4万トンに激減した。しかしながら、本年2月1日
からEU、続いてイスラエル市場が解禁となった。解禁当初ウイルス活性が消えて
いないという理由で除外されていたコルドバ州を含む3州も3月中には、輸出で
きる見込みである。なお、現時点において、チリ、ロシアの解禁は先になる見込
みである。


価格は低下傾向にあるものの、今後は輸出競争力向上を期待

 国内の生体価格の指標となるリニエルス家畜市場の去勢牛生体価格の近年の推
移を見ると、2000年は1kg当たり0.76〜0.92ペソ(約51〜63円:1ペソ=68円)
と前年を上回って推移し、2001年前半は同0.85ペソ(約58円)前後であったが
徐々に下落し、年末には同0.64ペソ(約44円)と史上最安値を記録した。これ
は、〓口蹄疫の発生で4月以降主要な輸出市場が閉ざされたこと、〓2001年後半
の長雨による大規模な浸水のため、生産者が未仕上げの肉牛の出荷を急いだこと、
〓長期にわたるアルゼンチンの経済不況の影響で、代金決済の遅い庭先取引を生
産者が嫌ったことなどにより、リニエルス家畜市場の上場頭数が増加したことに
よると考えられている。

 2002年1月の同市場の去勢牛生体価格は、1kg当たり0.75ペソ(約51円)
と持ち直し現在に至っている。2001年末からの経済危機の影響で、生産者が先行
き不透明な市場価格を敬遠し市場への出荷を控えたこと、牛肉の国内消費が落ち
なかったことなどが価格の上昇要因とされている。

 なお、輸出用と考えられる肉用牛の生体取引価格は、2001年の平均が1kg当た
り0.78ドル(約105円)であったが、今後は通貨切り下げの影響で0.45〜0.55
ドル(約61〜74円)で推移すると見られており、特に0.45ドルは世界的
に輸出競争力の強い価格だと業界関係者は考えているようだ。

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