学乳供給日数を大幅に拡大(タイ)
対象年齢・供給日数を徐々に拡大
タイ政府は2002年の学校給食用牛乳(学乳)予算の詳細を公表した。これ
によると、供給対象学年は前年と変わらないものの、供給日数を前年の200日か
ら休日を含めた260日に拡大することにしており、政府の負担額が約11%増加す
るとともに、各県にも新たな負担を求めている。今回の予算が公表どおり実施さ
れれば、これまで大きな問題となってきた休日の余乳処理問題がいくぶんかは軽
減される見込みである。
タイの学乳制度は92年に幼稚園児のみを対象にして開始され、供給日数120日、
予算額も2億7,900万バーツ(約8億7,900万円:1バーツ=3.15円)と小規模
だったが、94年には供給日数を200日に拡大し、順次対象年齢も拡大してきた。
2001年からは対象をインターナショナル・スクールなど一部の私立校を除く幼稚
園から小学校4年生まで(4歳から10歳まで)の全児童と小学校5、6年で標準
体重を下回る児童の合計約622万人を対象に予算額60.7億バーツ(約191億円)
を計上した。2002年は、対象学年が変更されない中で、児童数は約584万人と前
年を下回っているものの、予算額は約67.5億バーツ(約213億円)と、前年を約
11%上回っている。学乳予算は、管轄児童数に応じて教育省(57.7億バーツ:
約182億円)、内務省(6.8億バーツ:約21億円)、バンコク都(3億バーツ:
約9億4,500万円)、パタヤ市(900万バーツ:約2,800万円)に配分されている。
同国の学乳制度は、対象児童に1日当たり5バーツ(約16円)で200mlのUHT牛乳
か殺菌乳を提供するもので、UHTと殺菌乳の比率は7対3となっている。また、
この制度でカバーしている児童数は、同年齢の児童数全体の7割程度となってい
る。
休日の余乳処理問題解決の意図も
今回、対象児童数が減少しながらも予算額が増加したのは、供給日数をこれま
での200日から休日の30日を含む230日に拡大したためである。政府は、各県の予
算で供給し、合計供給日数を260日にすべく調整中である。タイの学校は、1学
期が130日の2学期制であり、各学期の間には長期の休日がある。今回の措置は、
この長期の休日にも児童の栄養水準を向上させようというのが表向きの狙いだが、
かねてから大きな問題となっている余乳の発生を抑えようとする意図もある。
農業協同組合省は、学乳制度に直接携わっていないが、99年、内閣の指示によ
り、学乳には100%国産生乳を使用しなければならない旨の通達を行った。これ
に対しては、国産生乳を使用することによって利幅が減少する学乳供給業者の強
い反発があり、実施は昨年にまでずれこんだ。また、同省は問題なしとしている
ものの、このような通達は内外無差別を規定したWTO協定に抵触している可能性
があり、同様の制度により国内酪農を振興したいフィリピン政府は国産生乳使用
の義務付けを躊躇している。国産生乳100%使用義務を課することにより、タイ
では1日当たり1,300トンの生乳生産量のうち、1,200トンが学乳で消費され、酪
農振興に大きな役割を果たしていることも事実であるが、同時に休日には大量の
余乳が発生するという皮肉な結果も生じている。
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