◇絵でみる需給動向◇
2001年5月以降、史上最高を更新し続けていたブロイラーの生産量が昨年末以来、 減少局面を迎えている。タイのブロイラーの生産量は、欧州諸国で発生した口蹄疫 や牛海綿状脳症(BSE)により同地域における鶏肉需要が急速に高まったことから、 輸出向けを中心に増産意欲が強まり、2000年後半以降はほぼ一貫して増加傾向で推 移していた。しかし、タイ農業協同組合省が毎月公表するブロイラー生産の動向に よると、最近の生産量は前年同月を上回ってはいるものの、昨年11月以降は5ヵ月連 続で前月を下回っている。2002年3月の生産量は前年同月比2.5%増の8,313万羽にと どまり、近い将来に前年同月を割り込む可能性も出てきた。 こうした生産の減少を誘引した背景として、好調を維持していた輸出に陰りが見 え始めたことが挙げられる。2002年1〜4月の鶏肉輸出量は、前年同期比6.2%増の1 4万トンになったものの、前年同期の伸び率と比較すると34ポイントもの大幅な低下 となっている。
ブロイラーの生産動向を大きく左右するひなのふ化羽数も、ブロイラーの生産量 と同様に、2001年10月をピークに11月以降は連続して前月を下回っている。2001年 1〜3月のひなふ化羽数は、前年同期比6.2%増の2億6,427万羽となったが、前年同期 の伸び率と比較すると3ポイント低下している。 なお、2001年のひな価格は、輸出需要の増大に伴って高騰し、9月には1羽当たり 13.1バーツ(約39円:1バーツ=3円)とこれまでの最高価格を記録した。10月以降 はやや下落したものの、2002年の第1四半期にかけて11バーツ台の高水準で推移して いる。 ◇図:ひなふ化羽数と価格の推移◇
今後の生産動向に影響を与える要因として、EU諸国が今年3月以降、同地域で使 用が禁止されている抗菌剤(ニトロフラン)がタイ産鶏肉から検出されたとして、 輸入規制を行っていることが挙げられる。 タイブロイラー加工輸出協会をはじめとした鶏肉業界団体は6月下旬、前年の輸出 全体の34%を占めたEUへの輸出を正常化するため、政府に対して、製品中のニトロ フランを検出する検査機関を直ちに設立することを要望している。タイの鶏肉業界 では、昨年の輸出ブームを受け、最大手のチャロン・ポカパン・フーズ社をはじめ として多くの生産者が増産体制を整えてきたと言われる。そうした努力を無駄にし ないためにも、国内の検査体制を早急に強化することが生産回復への一つのカギに なると思われる。
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