◇絵でみる需給動向◇
EUの牛乳・乳製品管理委員会は6月27日、入札方式による6,664トンの脱 脂粉乳(SMP)の介入買い上げを承認した。入札方式によるSMPの介入 買い上げの実施は、91年以来、11年ぶりのことである。 EUでは、バターやSMPの介入買い上げなど乳製品に対する価格支持を 実施し、生乳価格を間接的に支持する仕組みとなっている。各国の介入買い 上げ機関は、SMP生産の増加する期間(3月1日〜8月15日)に一定品質のS MPを介入価格(205.52ユーロ/100kg(約24,586円:1ユーロ=120円)で買 い上げる義務を有している。この場合のSMPの買い上げ限度数量はEU全 体で年間109,000トンとされており、限度数量を超えた場合には、残りの期間 について入札方式による介入買い上げに移行できることとなっている。 SMPの介入在庫量は2000年10月以降ゼロとなっていたが、2002年3月1日 からは毎週5千トン前後の買い上げが開始され、5月中旬以降には週当たりの 買い上げ量が1万トン以上に増加した。6月中旬には、早くも年間買い上げ限 度数量を突破したため、通常の介入買い上げは6月15日に停止された。今回実 施された第1回目の入札方式による買い上げを含めると、2002年の介入買い上 げ数量の累計は、92年以降で最大となる13万5千トンに達している。
EUにおけるこうしたSMP需給の失調は、@SMPの域内生産の増加と A国際競争力の相対的な低下によるSMPの輸出停滞がもたらしたものであ る。 2002年1〜3月のEUのSMP生産量は、前年同期比10.2%増の24万9千トン と急増している。これは、生乳生産クオータの増枠や今年前半に良好な気候 に恵まれたことで生乳出荷量が増加(1〜4月:前年同期比1.0%増)した中で、 チーズ生産が伸び悩んでおり(1〜3月:同0.5%増)、全粉乳の生産も大幅に 減少(1〜3月:同15.7%減)していることから、結果としてSMP生産に仕 向けられる生乳が増加していることが要因となっている。 SMPの国際市況に目を向けてみると、国際的な経済の停滞により、SM P需要は伸び悩んでいる。一方、供給面では、オセアニア諸国が生乳生産を 増加させるとともに、価格競争力を武器に輸出を伸ばしている。また、東欧 も輸出に向けた在庫を抱えているといわれており、供給サイドの競争は激化 している。 EUでは2001年11月以降、徐々にSMPに対する輸出補助金を増額してい るが、最近の為替相場のユーロ高基調による影響もあり、欧州産SMPの輸 出競争力回復に対する効果は限定的なものとなっている。7月以降は、米国の 乳製品輸出奨励計画(DEIP)によるSMP輸出の割当が再開されるなど、 SMP輸出をめぐる環境はさらに厳しさを増すとの見方もある。このため今 後は、SMPの輸出量が多いドイツやアイルランドなどを中心に、EU委員 会に対し、輸出補助金のさらなる引き上げを求める声が上がる中、7月12日か らの引き上げが決定した。 ◇図:脱脂粉乳の在庫量と輸出補助金の推移◇
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