食肉を含む廃棄物のたい肥利用を再開か ● イギリス
適正な処理等で低リスクとする食品廃棄物規制の見直しへ
イギリス環境食料農村地域省(DEFRA)は6月7日、「たい肥化およびバイオガス産生処
理による、食肉を含む食品廃棄物の廃棄に関するリスク評価報告書」を公表した。この
中で、一定の基準で処理され、適正に管理されれば、同廃棄物を農地等に散布しても、
人および動物ヘ与えるリスクは、容認できる低レベルであると報告された。イギリスで
は2001年5月24日から、口蹄疫、豚コレラなどの再発防止の観点から、食肉を含む食品廃
棄物について、家畜に給与することおよび(野鳥などが接触する恐れのある)農地等へ
の散布が全面禁止されている。今回の報告を受け、DEFRAでは規制の見直しを検討してい
る。
たい肥化処理のう回路遮断、高熱化処理などにより散布は許容可能
1. 食肉を含んだ食品廃棄物をたい肥化し農地などに散布した場合、食肉に存在する可
能性のある病原体による牛、羊、豚、鶏へのリスク評価が行われた。さらに、そのた
い肥を扱う人およびたい肥が散布された土地で生育した作物を消費する人へのリスク
についても検討された。リスク評価の対象となった病原体(疾病)は、伝達性海綿状
脳症、外来の豚ウイルス、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター、サルモネラ、
ニューカッスル、ボツリヌス、寄生虫である。なお、評価に当たり、イギリスにおけ
る食品廃棄物の各病原体による汚染度については、実態等を基に一定の条件を仮定し
ている。
2. 全体の結論
以下の事項を満たした場合、たい肥化(またはバイオガス産生)処理された食品廃
棄物を農地等に散布することは許容できる。
@ たい肥化または(メタンガスなどの)バイオガス産生処理のう回路を絶つこと
(原料となる食品廃棄物は、家畜を飼養する農場で保管しないこと、鳥や小型ほ
乳類が近づけないようにすること、屋内で受け取ること)
A 食肉を含む廃棄物は、2段階処理を行うこと(B〜Dのたい肥化処理またはFの
バイオガス処理について)
B 各段階では、たい肥化処理を14日以上継続し、そのうち2日間は60℃以上に達す
ること
C 第1段階では、容器内または屋内でたい肥化を行うこと
D たい肥化中に3回以上切り返すこと
E (汚染された)原料と(清浄な)製品は分離し、別の機具で扱うこと
F バイオガス処理は、57℃、最低保証維持時間(発酵時間):5時間、液圧保持時
間(保管期間):19日で行うこと
G たい肥化処理を行う際の最大粒子直径は40cm、バイオガス処理では同5cmとする
こと
H たい肥化処理された廃棄物を散布した土地には、2ヵ月間は家畜を放牧しないこ
と
3. 個別の結論
@ 病原体がたい肥化またはバイオガス処理で破壊されず、土壌中で消失しないと
しても、プリオン病(牛海綿状脳症、スクレーピー)による動物および人へのリ
スクはわずかである。
A 2ヵ月間の放牧禁止、ならびにたい肥化またはバイオガス処理の第2段階処理過
程は、豚コレラ対策に不可欠であり、口蹄疫の発生中の対策としても重要である。
B 第2段階処理過程は、たい肥が摂取された場合を想定すると、カンピロバクター
およびサルモネラによるリスクを許容レベルにまで減少させるために重要である。
C クロストリジウムの芽胞はたい肥化やバイオガス処理を行っても破壊されない。
ボツリヌス菌による6ヵ月齢以下の乳児のリスクは排除できないが、たい肥中の芽
胞量は、報告のある(一般の)土壌のレベルを上回るものではないと推定される。
D ここに示したたい肥化の適正処理過程は、現行の埋却処理よりも多くの管理点
があることから、たい肥化の方が埋却よりも家畜衛生リスクが低くなるかもしれ
ない。
E たい肥を散布した土地で生育した作物を消費することによる人への健康リスク
は大変低い。
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