干ばつが懸念される中、穀物減産を予測     ● 豪 州



QLD州やNSW州北部を中心に干ばつの恐れ

 豪州では最近数ヵ月間、特に地方部で乾燥した気候が続いており、冬穀物の作付けな
どに影響が出始めている。特にクインズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(N
SW)州北部における乾燥状態は深刻で、これらの地域を中心に干ばつの恐れが高まって
いる。

 5月に発表された気象庁の6月から8月までの間の降雨予想において、QLD州と南オース
トラリア州の降水量が例年以下になるとともに、NSW州や西オーストラリア州の小麦生産
地帯の大部分が記録的な雨不足に見舞われると発表された。その背景として異常気象を
引き起こすエルニーニョ現象の発生が示唆され、現在、エルニーニョ現象の初期段階に
あるとの観測が強い。豪州においてエルニーニョ現象の影響は、一般的には豪州北部と
東部に乾燥状態をもたらすと言われ、直近では豪州全土に影響を与えた97年の状況に似
てきていると見られ始めている。


ABARE、冬穀物の収穫量を前年度比14%の減少と予想

 このような状況の下、豪州農業資源経済局(ABARE)は6月11日、穀物レポートを発表
した。概要は次のとおり。

 ・01/02年度(7月〜6月)の穀物収入が良好であったことや、昨シーズンのレベルに
    近い収入が維持できるとの期待感から、当初、02/03年度の冬穀物(10〜11月収穫
    )の作付面積は、昨シーズン(約2,000万ヘクタール)よりわずかに増加すると予想
    されたが、6月初旬までに、予想された面積の半分を下回る作付状況である。

 ・3月末からの多くの穀物地帯における降雨量の不足は、予定されていた作付面積の播
    種を困難にした。大部分の地域においてカノーラやルピナスのような作物の播種に
    適した時期がすでに終了したが、小麦や大麦については、単収を大きく下げないで
    播種する時間がまだ残されている。

 ・7月にかけて作付けに十分な降雨があると想定して、02/03年度の冬穀物の総作付面
    積は、昨シーズンより3.5%減の約1,930万ヘクタール、同じく冬穀物総収穫量は、
    14%減の3,200万トンと予想される。

 ・なお、01/02年度の夏穀物(5〜6月収穫)の総収穫量については、綿実作付面積の
    21%の減少が大きく影響し、昨シーズンから80万トン近く減少の480万トンであった
    と推定された。
    
 ABAREは、減産予測の中にあって、多くの地域における生産者が適切な播種に必要な雨
を待っているという状況にあるなど、今後の降雨次第で収穫の予測は大きく左右される
と総括している。


野党、早くも干ばつ救済対策を要請

 02/03年度(7月〜6月)の連邦政府予算案で示された国内総生産(GDP)成長率3.75%
との経済見通しは、農業部門での同率の伸びが前提となっているが、政府関係者の間で
も、その達成は困難との見方が強まっており、干ばつの豪州経済に与える影響が懸念さ
れている。

 差し迫る干ばつの恐れから、早くも野党・労働党は政府に対して、干ばつ救済対策と
して、特別災害支援(Exceptional Circumstances assistance)の適用を要請している。

 また、最近の肉牛価格下落の要因として、豪ドル高や日本向け牛肉輸出の落ち込みな
ど以外に、東部州で降雨量が少ないため、市場に出回る肉牛が増えていることが挙げら
れており、穀物生産の動向のみならず、豪州の農畜産業は気象条件に大きく左右されて
いる。



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