口蹄疫の発生を想定した影響調査結果を報告   ● 豪 州



最大でGDPを130億ドル引き下げる影響

 生産性委員会(Productivity Commission)は6月12日、口蹄疫発生時の影響報告書を
発表した。これによると、豪州国内で口蹄疫が発生した場合、その経済的な影響は、期
間にして8年以上、輸出利益を90億豪ドル(約6,300億円:1豪ドル=70円)以上減少さ
せ、国内総生産額(GDP)を80億豪ドル(約5,600億円)から130億豪ドル(約9兆1千億
円)減少させるという大きな影響を示唆する内容となっている。

 今回の調査報告を作成した生産性委員会は、各産業に対し調査、助言を行う連邦政府
の独立機関である。本調査は、大蔵省からの要請に基づいて行われた。


口蹄疫発生時の影響額を3種類のシミュレーションに基づき試算

 この報告書は、添付資料も含めると200頁を超えるもので、口蹄疫の発生から根絶まで
の影響について、肉牛産業だけでなく養豚や羊牧などの他産業、地域経済、環境、輸出、
防疫などマクロ経済への波及とその影響額を含め、3種類のシミュレーションに基づいて
まとめたものとなっている。

 ・小規模発生:発生から根絶までに要する期間は3ヵ月。小麦と羊牧の主要地域である
    西オーストラリア(WA)州において3万8千頭の羊を殺処分
    
 ・中規模発生:発生から根絶までに要する期間は6ヵ月。クインズランド(QLD)州の
    北部で肉牛から発生し、同州中部、北部準州へと伝播、5万頭を殺処分
    
 ・大規模発生:発生から根絶までに要する期間は12ヵ月。ニューサウスウエールズ(
    NSW)州南部で肉牛、乳牛、豚、羊から発生、ビクトリア(VIQ)州西部、南オース
    トラリア(SA)州東部へ拡散、75万頭の家畜を殺処分
    
 生産性委員会の推計では、口蹄疫への対応と撲滅のためのコストとして、小規模発生
の場合、3千万豪ドル(約21億円)、中規模発生が1億5千万豪ドル(約105億円)、大規
模発生が4億2千万豪ドル(約294億円)、そのほか補償等にそれぞれ400万豪ドル(約2億
8千万円)、1,900万豪ドル(約13億3千万円)4,100万豪ドル(約28億7千万円)が必要と
試算された。


大規模発生で、輸出への損失が年間95億豪ドルに

 豪州は、牛肉の輸出量の85%、羊肉の40%を口蹄疫清浄国に輸出しているが、口蹄疫
が発生した場合、それらのマーケットを失うのみならず、非清浄国への輸出も閉ざされ
るとされており、大規模発生の場合、年間で94億8千万豪ドル(約6,636億円)の損失が
生じると試算された。さらに、輸出依存型であるこれらの産業の海外輸出マーケットが
失われることで、供給過剰となり、国内市場も一気に下落することが想定されている。
この場合、国内における損失額は、年間33億3,200万豪ドル(約2,334億円)と試算され、
畜産業界の輸出、国内マーケット合計で年間128億1,200万豪ドル(約8,970億円)とな
り、その影響の深刻さが顕著に表れている。

 州別では、家畜の総飼養頭数が最も多く、特に肉牛飼養頭数では豪州全体の5割を占め
るQLD州で50億豪ドル(約3,500億円)の損失とされている。

 今回の報告書では、産業全体の損失を軽減させる策として、口蹄疫発生地域を限定(
ゾーニング)、それ以外の地域を非汚染地域として、継続的に輸出を可能とすることが
挙げられているが、輸出相手国側からの合意が得られるかといった実際的な問題が残さ
れている。




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