ナショナルフーズ、スーパー最大手とPBの全国契約 ● 豪 州



ウールワースにPB用飲用乳を供給

 豪州乳業大手ナショナルフーズは6月中旬、スーパーマーケット最大手ウールワースと
のプライベートブランド(PB)牛乳の供給契約に関する入札において、すべての州で落
札をした。この結果、同社は今年9月から2年間にわたり、豪州全土のウールワースに対
してPB用の飲用乳を供給することとなる。

 2000年7月に行われた酪農乳業制度改革の直後に実施されたスーパーマーケットのPB牛
乳の供給契約に関する入札は、乳価下落の端緒となり、飲用乳供給地域を中心に酪農経
営に多大な影響を及ぼしたため、酪農生産者にとって良くない出来事の1つとも言われて
いた。特にウールワースは小売部門の約4割を占める最大手であり、その価格設定が他の
スーパーマーケットに与える影響が大きいことから、今回の入札は注目を集めていた。

 ナショナルフーズは従来、ニューサウスウェールズ州、西オーストラリア州、タスマ
ニア州、北部準州においてウールワースとの供給契約を結んでいたが、今回の入札の結
果、新たにクインズランド州、ビクトリア州、南オーストラリア州における供給契約を
結ぶこととなる。新たな州における従来の供給業者は、協同組合系のデイリーファーマ
ーズであった。


乳価へどう反映されるかが焦点に

 今回の契約は飲用乳市場において前例がない全国的な供給契約であり、ナショナルフ
ーズは今後、全国の飲用乳市場の約8%を供給することとなり、同社の飲用乳供給量を現
在の約8万キロリットルからおよそ20万キロリットルにまで高めるとされる。

 ウールワースは、今回の新たな契約に関して、契約の基礎となる供給価格は公表して
いないが、2年間にわたって1リットル当たり5豪セント(3.5円:1豪ドル=70円)の段階
的な値上げを示唆しており、これにより生乳生産者や乳業会社に対する経営圧迫の圧力
が軽減され、特に生産者の不安を取り除くとしている。その結果として、2年間にわたっ
て小売価格が約4%上昇すると見込んでいる。

 この5豪セントの段階的値上げについて、豪州酪農生産者連盟(ADFF)では、「5豪セ
ントの大部分が2年にわたって生産者に還元されるべきであるというウールワースの意見
をナショナルフーズが履行することを期待する」としている。しかし、ナショナルフー
ズでは、「われわれは協同組合ではないため、会社の利益は株主への配当とされ、生乳
供給者に自動的に還元されることはない」とあくまでも支払うべき乳価は競争や需給の
要因によるものであるとしているため、両者の見解は大きく異なっており、その取り扱
いは不透明である。

 また、ナショナルフーズは現在、生乳取引における生産者の団体交渉権の認可を行っ
た豪州自由競争消費者委員会(ACCC)を相手として、豪州自由競争審判所(ACT)に提訴
しており、その審議は来年の2月ごろまで続くことが予想され、同社の生産者に対する乳
価の取り扱いが注目される。


業界再編の動きが加速

 一方、今回の入札で従来の供給先を失ったデイリーファーマーズは、その収入の約5%
と飲用乳供給量の約7%を失ったとされるが、「失望はしたが、通常のビジネスにおける
勝負の世界での出来事の1つ」として基盤となる販路に影響はないとしている。

 しかしながら、今回の入札の結果、業界再編の動きが再び加速するとの見方もある。
ナショナルフーズをめぐっては、同社が上場企業であることから、今年に入り、株主と
してデイリーファーマーズと多国籍企業ダノンが参入し、現在、同社の大株主として、
ニュージーランドのフォンテラ(約18%)、デイリーファーマーズ(約9%)、ダノン
(約10%)が名を連ねている。特にデイリーファーマーズについては、過去において合
併論議もあったことからその関係は複雑な様相を呈している。




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