中国と畜産物輸出体制整備を協議      ● ミャンマー



ミャンマー政府が動物検疫に係る代表団を派遣

 中国雲南省第一農業部の要請を受け、ミャンマー畜水省は、5月15〜21日の7日間にわ
たり、雲南省の省都である昆明市へ代表団を派遣した。今回の代表団は、同省家畜改良
・獣医局長を団長とし、同局の獣医官1名と雲南省に国境を接するムセ市駐在の同局家畜
検疫官の3名構成であった。なお、派遣に当たっては、早急に中国への畜産物輸出を推進
したいミャンマー畜産連盟が旅費などを提供した。

 ミャンマーは、民主化運動への抑圧などを契機として、先進諸国から経済制裁を受け
ているため、人道援助以外の経済援助が停止されているほか、外国からの直接投資もほ
とんど伸びておらず、経済状態が悪化している。また、隣国タイとの関係も、タイと国
境を接するシャン州の独立運動などとの関係により緊張状態が続いている。一方、中国
はミャンマーを重要な貿易相手国と位置付けており、ミャンマーの畜産関係者も同国の
生産コストが中国の半分であることから、中国への輸出に活路を見出そうとしている。
ミャンマー中部、同国第2の都市で畜産の中心地でもあるマンダレー近郊では、中国への
輸出を念頭に置いた大規模畜産施設(肉豚50万頭、肉鶏50万羽規模)の建設も開始され
ている(「畜産の情報」(海外編)6月号特別レポート参照)。


中国政府がミャンマーにおける検疫体制の確立に協力

 今回の代表団派遣は、昨年末、中国の江沢民主席がミャンマーを訪問した際に両国が
合意した貿易促進の具体化の一環として、畜産分野の貿易上問題となる動物検疫に関す
る問題解決が主な目的である。

 両国国境の中国側には92年から5ヵ年をかけて建設され、96年に開所した動物検疫施設
があり、すでに職員から獣医師20名を選抜して、豪州など外国の大学院で学位を取得さ
せ、検疫に係る人的体制も整えている。しかし、ミャンマー側ムセ市の検疫体制につい
ては、同国の財政難から十分確立されているとはいえない状態であり、畜産物貿易の本
格化を前に体制整備が急がれている。今回、中国側は、ムセ市にミャンマー政府の動物
検疫所を建設するための資金援助を行うことに合意したほか、研修などを通じて人的な
面からも検疫体制の確立に協力することとなった。

 今回、両国間で合意したのは次の5項目であり、二国間関係においては、中国が大国と
しての地位を誇示する形となっている。

 ・ 国境における家畜疾病防除に両国が協同して当たる

 ・ ミャンマー側ムセ市に動物検疫事務所および検査施設を建設するための資金援助

 ・ ミャンマーの獣医師の研修受入れ

 ・ 畜産分野に関する技術移転

 ・ 種畜および乳用牛凍結精液の供与

 今回は、資金援助の額、研修受入れ人数、凍結精液の供与本数など、中国側からの援
助の具体的な数字までは合意されていないが、ミャンマー側は援助額をおおむね5,000万
チャット(約700万円:100チャット=14円)と見積もっている。家畜改良・獣医局は、
6月25日に局長他数名がムセ市に出向き、検疫事務所などの建設予定地の選定を行った。
7月末には、雲南省第一農業部長を団長とする代表団がヤンゴンを訪問し、援助内容につ
いて家畜改良・獣医局と最終的な合意を行う予定である。

 ミャンマーの畜産関係者の間では、今回の合意に加え、中国のWTO加盟に伴う貿易障壁
の削減によって、畜産物の輸出が飛躍的に伸びることに対する期待が高まっている。



元のページに戻る