メコンデルタで酪農振興が始動        ● ベトナム



政府による酪農セミナー開催で高まる意欲

 ベトナム農業・農村開発省は、6月14〜17日の4日間、メコンデルタ地帯の中心都市で
あるカントー市で農畜産物交易会を開催し、7万人を超える農家を集めた。14日には、同
会の一環として酪農セミナーを開催し、メコンデルタ各県農業・農村開発部の普及担当
者、酪農家や今後酪農を希望している一般農家100人以上が集まり、会場に入りきれない
盛況となった。同国では、毎年、数百万トンの米の輸出余力を有しているが、米の国際
相場が低調であることから、農家の収入向上策として酪農振興が重要課題とされており、
実際にホーチミン市の酪農が成功裏に推移しているため、特に南部各県での意欲が高ま
っている。


乳牛の増頭計画を発表

 メコンデルタ各県では、近年の農作業機械化の進展に伴い、過去20年間に牛の頭数が
大幅に減少している。今回のセミナーで、農業・農村開発省は酪農開発を集中的に行う
計画を発表した。対象となるのは、酪農に必要な淡水の地下水が得られるドンタップ、
アンザン、カントー、ロンアンの4県だが、これらの県における牛の頭数の減少率は各々
▲15.5%、▲44.2%、▲47.0%、▲55.6%となっている。また、各県の乳用牛頭数は、
ドンタップ県とアンザン県がゼロ、カントー県が24頭、ロンアン県が877頭であり、4県
の牛の総頭数の1.4%を占めているにすぎない。

 この計画によれば、4県では、2002年中に乳牛頭数を2000年の6倍に相当する5,430頭ま
で増やし、2005年には17,800頭にまで増やすこととしている。これら4県には現在のとこ
ろ乳用牛がほとんどいないため、増頭は豪州を中心とした外国からの輸入と国内の乳牛
の9割に相当する36,000頭あまりが集中しているホーチミン市とドンナイ県など同市に隣
接する4県からの移入に頼らざるを得ない状況である。

 現在、同国では、生乳の農家手取り価格が1キログラム当たり4千ドン(約32円:100ド
ン=0.8円)以上と他の農畜産物に比べて収益性の高い水準に設定されており、ホーチミ
ン市などの酪農家は高い収益をあげている。このため、南部各県では酪農生産拡大意欲
が高まっており、国内の乳牛価格が高騰している。なお、最近豪州から輸入されたホル
スタイン種の初妊牛の場合、1頭当たり1,250米ドル(約15万円:1ドル=121円)、高能
力として農民に好まれる米国からの輸入では豪州産の2倍の経費が必要となっており、初
期投資の確保が課題となっている。


飼料の確保が将来的な課題

 ベトナム最大の都市であるホーチミン市の南方に広がるメコンデルタ地帯には12県が
あり、国内の米生産量の50%以上、1,600万トンを超える生産量を誇る穀倉地帯となって
いる。同地域は、かんがい用の水路が網の目のように発達し、ほとんどの地域で米の三
期作が行われており、水田以外の耕地でも年間3ヵ月程度は冠水状態におかれる。このよ
うな環境に適した牧草類はパラグラスやハイマネチ属など数種類に限定され、パニカム
類の栽培で1ヘクタール当たり400トンの青草を生産できるホーチミン市周辺より不利な
状況にある。現在のところ、乳牛頭数が少ないこともあって、ベビーコーンの収穫残さ
や豆腐かすなどが無料で入手できるため飼料の確保には問題がないが、今後、計画どお
りに乳牛頭数が増加するのであれば、土地の制約から飼料の確保が問題となるものとみ
られる。なお、生乳の処理に関しては、カントー市にビナミルク社の1日当たり100トン
の処理が可能な工場が稼動しており、当面は問題ないとされている。



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