中国の鶏卵をめぐる動向……低迷する鶏卵価格



飼料価格は全般的に値下がり、畜産には有利な状況

 先般、中国農業部が監修している情報誌に中国農業大学のスタッフの執筆による中国
の鶏卵をめぐる状況に関するレポートが掲載された。これによれば、2002年4月のトウモ
ロコシ価格は1kg当たり1.06元(約16円:1元=15円)で、この半年の平均より1.9%値下
がりした。省によって状況は異なり、トウモロコシ価格が下落した省(その他の地方自
治区分を含む。以下同じ)は、江西省、河北省、湖南省、広東省、貴州省、山西省など
で、これらの省は主として南方に集中した。一方、トウモロコシ価格が上昇したのは、
陝西省、甘粛省、遼寧省、山東省、雲南省などで、値上がり幅が最も大きかったのは陝
西省、寧夏自治区、上海市、広西自治区などであった。

 大豆粕類を中心とするたん白飼料価格についても、全体的に値下がり気味である。4月
の大豆粕類は1kg当たり平均1.95元(約29円)で、この半年の平均より3.1%値下がりし
た。前月との比較では、1トン当たり42.7元(約641円)下落したことになる。下落幅が
最も大きかったのは陝西省、河南省、福建省、山西省、江蘇省、湖北省などで、内陸の
省と沿海の広東省、浙江省、遼寧省、天津市などは、若干の下落に止まった。なお、た
ん白質飼料の国際市場価格は、中国国内の価格を下回っているため、現在大豆類は一貫
して輸入されている。

 結論として、飼料穀物の全般的な値下がりは、鶏卵を始めとする畜産物の生産に有利
な要因の1つとなっている。


鶏卵価格は低迷、地域的な価格差を考慮した出荷などが必要

 2002年4月の鶏卵小売価格は1kg当たり5.15元(約77円)で、この半年の平均より5.2%
値下がりした。供給増などによって、大半の省で鶏卵価格が下落しており、その幅が最
も大きかったのは貴州省、江蘇省、天津市、重慶市、湖北省、四川省、山西省などであ
った。これに対し、鶏卵価格が上昇したのは、雲南省、広西自治区、河南省、天津市、
福建省のわずか5省で、ほとんどの養鶏農家は厳しい状況下にあることがわかる。特にト
ウモロコシ価格の高い一部の省で経営状況の悪化は顕著となっている。

 こうした低価格に対処するには、鶏卵加工業の振興を図ることも一案である。世界で
鶏卵価格が最も安いとされるアメリカでも、小売価格は1kg当たり約10元(約150円)で
あり、中国ではこのさらに半分である。こうした価格優位性を基に、中国の鶏卵加工業
が競争力を発揮する潜在性は高いといえる。

 一方、流通システムの不備から、鶏卵の地域的な価格差は依然としてかなり大きいた
め、当該システムを改善することにより、利益の得られる地域に出荷することで鶏卵価
格の低迷に対応することも可能であろう。


養鶏の経営は厳しい情勢、今後も赤字が継続か

 2002年4月の養鶏農家の経営は、飼料価格の値下がりにもかかわらず、鶏卵価格の低迷
から大半が赤字に陥った。特に陝西省、山東省、福建省、山西省、遼寧省、河南省など
で赤字が深刻であったものとみられる。専業の養鶏農家でも、利益を上げることは困難
とされており、経営状況の改善は、鶏卵の供給を抑制し、価格の値上がりを待つしかな
いとみられている。

 なお、同月に利益をあげた省は貴州省、湖南省、四川省、湖北省、江西省などの8省の
みであった。これらの省はいずれも西南の山地に位置し、他地域からの鶏卵の搬入が困
難であることから、鶏卵価格が恒常的に高い地域とされる。しかし、これらの市場もそ
の規模ゆえに他の地域に対する影響は限られたものであることから、今後も多くの地域
で養鶏農家の赤字が継続するものと予想される。



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