ワールド・ポーク・エクスポにおけるブッシュ大統領のスピーチ ● 米 国


 本誌冒頭の「グラビア」欄でも紹介したとおり、6月7日、アイオワ州デモインで開催
されたワールド・ポーク・エクスポの会場において、ブッシュ大統領の演説会が行われ
た。

 リッジ米国土安全保障局長官も同席した大統領スピーチの内容は、前6日夜のテレビ演
説で自ら発表したテロ対策強化のための国土安全保障省(Department of Homeland Sec
urity)創設構想(注)に半分以上が費やされ、農業問題への言及は限られたテーマにと
どまった。

(注:本構想においては、米農務省(USDA)の動植物衛生検査局(APHIS)とプラム・ア
イランドにある家畜疾病研究所を国土安全保障省に統合することが明示されている。こ
れに対し、生産者団体や関係議員などからは、「APHISの組織すべてを国土安全保障省に
移管するのではなく、検疫業務以外はUSDAの中に残しておくべきである」といった声が
上がっているなど、調整には難航が予想される)。


国家安全保障上の食料自給の重要性と、過剰農産物の輸出促進の必要性に言及

 農業問題に関しては、まず、一定規模以上の資産を有する大規模農業経営にも関係す
る相続税の扱いについて、ちょうど1年前のその日が、2010年までを期限とする相続税の
段階的撤廃措置(2011年以降の扱いは未定)を盛り込んだ減税法案に大統領自身が署名
した日であるとして、2011年以降の相続税の恒久的廃止をうたった新法案(下院通過済)
の上院での可決を強く促した(しかし、大統領の希望はかなわず、上院では、翌週の6月
12日に否決された)。 

 次に大統領は、コーン・ベルトというアイオワ州の地域性にも配慮して、代替エネル
ギーであるエタノール(注:その大半はトウモロコシ由来)やバイオ・ディーゼル(注
:植物油や動物油脂が原料)などの利用促進を図るためのエネルギー法案の必要性も強
調。そして、「国家安全保障のためにも、国内需要以上の食料を生産できるのは重要な
ことである。供給過剰は問題だが、その場合、アイオワ産の豚肉は海外市場で売れば良
い。(このためには)貿易促進権限(TPA:ファスト・トラックと同義)が必要である」
「豚を育てるのがうまいわれわれが行うべきは、世界中にわれわれの豚を売ってゆくこ
とである」と訴え、養豚関係者などからは惜しみない拍手が送られた。 

 一方、5月13日に成立した新農業法に関しては、意外にも多くを語らず、「私は良い
(good)農業法に署名した。それは、米国の農業者、そして米国自体にとっても良いも
のである」などと述べただけであった。 

 本エクスポ初の現役大統領による演説が実現したのは、国土安全保障という目下の最
重要政策を喧伝するための格好の場、そして自身が2000年の選挙で破れた同州での今年
の中間選挙も視野に入れたキャンペーンの場という意味合いが大きかったのかもしれな
い。しかし、今年2月の全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)の総会と同様に、一国の大統
領を呼べるだけの米国の畜産団体の政治力をまざまざと見せつけられたイベントであっ
た。

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