肉牛価格の低迷に対し、生産者団体が調査を要請 ● 米 国



2つの生産者グループがそれぞれ原因究明調査を要請

 最近の肉牛価格の低迷を受け、6月18日、全米最大の生産者団体である全国肉牛生産
者・牛肉協会(NCBA)と、家族経営が中心の中小28団体によるグループはそれぞれ、連
邦議会に対し、原因究明のための調査要請を行った。

 3月のカンザス州における口蹄疫誤報騒動によってシカゴ・マーカンタイル取引所(
CME)の生体牛価格が急落し、その後も下落が続いたのは既報のとおりである(本誌5月
号トピックス参照)。これについてNCBAの要請を受けて調査を開始した商品先物取引委
員会(CFTC)は4月下旬、インサイダー取引や価格操作の証拠はなく、生産の増大や輸出
の減少などのさまざまな市場のファンダメンタルズが原因であると結論づけた。しかし、
その後も価格は低迷を続けていることから、今回、2つのグループが改めて調査要請に踏
み切ったのである。

NCBAは、パッカーの寡占化の影響評価の重要性を指摘

 まず、NCBAの要請であるが、これは上下両院の農業委員会と予算委員会のメンバー全 
員に対して行われた。その主張のポイントは、@近年、食肉パッカーの寡占化や市場慣 
行の変化(生産者とパッカーなどが契約や統合によって結びつくいわゆる垂直的調整の 
進展)によって取引に大きな変化が見られる中、生体牛価格の変動も顕著になってきて 
いる、Aこうした価格の変動や低下の原因を究明するため、食肉・家きん肉産業全体を 
通じ、国際貿易の影響も含む広範な要因を考慮した市場分析調査が米農務省(USDA)に 
よって行われるよう資金を供給すること、Bその場合USDAは、複数のビジネススクール 
(経営学大学院)からなる中立的な独立組織と連携を取ること、などである。特に、パ 
ッカーの寡占化に関し、全米4大牛肉パッカーのと畜シェアが80年代は40%未満であった 
のに対し、今日では80%を超えているとして、こうした寡占化の影響評価の重要性を指 
摘している。

28団体のグループは、「とらわれの家畜」の影響や川下のマーケットパワーの増大などの要因も指摘

 一方、28団体のグループには、州や郡の肉牛生産者協会のほか、R‐CARF USAのよう 
な全国団体も含まれており、その要請先は、超党派の主要上院議員となっている。これ 
は、上院の農業委員会と司法委員会が生体牛価格の低下原因を究明するための包括的な 
共同調査を行うよう求めるものであり、この論拠としては、@今年の4〜5月は、牛肉生 
産量が過去最高を記録した2000年の同時期に比べると、生産量が少なく牛肉需要も伸び 
ているなど市場のコンディションは良好で、小売価格や卸売価格も当時を上回っている、 
Aしかし、肥育牛価格だけは100ポンド当たり60ドル半ばと、当時の平均価格の72ドル 
に比べ10〜15%も下回っている、Bこれは、パッカーによって所有、飼養、または契約 
や販売合意によって販売されているいわゆる「とらわれの家畜(captive supply)」に 
よる影響や、卸売・小売サイドからのマーケットパワーの増大、そしてパッカーの寡占 
化の進展など、複数の要因が働いているためであるとしている。 

 新農業法の検討過程では、食肉パッカーによる家畜の所有禁止措置と義務的な原産地 
表示制度の導入について、NCBAが反対の立場をとっていたのに対し、R‐CARF USAをはじ 
めとするその他の団体グループはいずれについても支持するなど、これら2つのグループ 
は見解を異にすることが多かった(新農業法は、最終的に、原産地表示制度を採用する 
代わりに、パッカー所有禁止措置は廃案にするという結論で妥結)。しかし、生体牛の 
価格低迷問題に関しては、やはり同じ生産者として、立場を同じくしている。 

 こうした動きに対し、これまでのところ、ハーキン上院農業委員長(民主党・アイオ 
ワ州)が調査の後押しをする旨を表明している。


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