カナダ、新たな農業政策の枠組みを策定
食品の安全性や品質、環境、経営リスクマネジメントなど5分野にわたる
クレティエン首相とヴァンクリフ農業・農産食料大臣は6月20日、昨年6月の連邦政府
と各州政府間で合意した基本計画に基づき、食品の安全性や品質、環境、経営リスクマ
ネジメントなど5分野にわたる2003年から5年間の新たな農業政策の枠組み(Agricultur
e Policy Framework:APF)を発表した。
その概要は、次のとおりとなっている。
1. 食品の安全性と品質:生産段階から消費者に至るすべてのフードチェーンにおける
追跡システムの促進や生産段階での安全性と品質を監視するシステムの構築を支援す
る。
2. 環境:農業と環境に関する情報提供や調査、環境リスクに対する最適な管理方法の
策定を支援する。
3. 経営リスクマネジメント:天候不良による作物収量減などに対する対処療法的な現
行のセーフティーネットプログラムに加えて、将来における経営リスクを低減するた
めの新たなアプローチを検討する。この場合、作物保険や純所得安定口座(NISA:農
家の純所得の安定を図るため、農家、政府が農家個人の口座に金銭を拠出しておき、
所得低下時にはその口座から不足分を引き出し補てんする制度。)のような現行プロ
グラムを基礎とした生産者にとって選択の幅の広い総合的なシステムの確立を目標と
する。
4. 知識啓発:生産者が新たな知識を習得するためのコンサルティングサービスや市場
に関する情報提供などを促進する。
5. 技術革新:食品の安全性や環境などの分野において最大の投資効果が期待できるよ
う官民が連携して調査や技術革新を行うことに対し支援する。
予算額は、総額81億8千万カナダドルを計上
こうした新たな農業政策を行うのに必要な予算額として、総額81億8千万カナダドル
(約6,625億8千万円:1カナダドル=81円)が計上され、このうち連邦政府が約6割の52
億カナダドル(約4,212億万円)を負担し、残りの約4割を州政府が負担することとなる。
なお、連邦政府分の予算の内訳は、以下のとおりとなっている。
1. APFを実施するのに要する経費として34億カナダドル(約2,754億円)
2. 新たなリスクマネジメントプログラムに移行するまでの今後2年間に限り、現行の
収入支援プログラムへの上乗せ分として12億カナダドル(約972億円)
3. APFに移行するまでの間の環境対策や輸出促進などのための経費として約6億ドル
(約486億円)
6月27、28日にはハリファックスで開催された連邦大臣および各州大臣との年次会
合では、ケベック、マニトバ、サスカチュワンの3州から合意は得られず、これに対
する連邦政府の見解も現段階では明らかにされていないため、見通しは不透明である
が、今後、連邦政府は合意に達した州との間で実施のための規則等の制定作業が開始
されることとなる。新たな農業政策の具体的内容や各州および生産者団体等の反応に
ついて今後も注視する必要がある。
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