◇絵でみる需給動向◇
近年の最高値を示していたブロイラーの卸売価格(バンコク市場、生体)が 下落傾向を示し始めた。タイ農業協同組合省が公表した2002年1月のブロイラ ー1kg当たりの卸売価格は31.3バーツ(約94円:1バーツ=3円)で、前年同月 を1.3%上回っているものの、この3年間で最高値を記録した2001年7月と比較 すると9.5%安とかなりの下落となっている。 近年、国内の景気低迷が慢性化する中、低水準で推移していたブロイラーの 卸売価格は、タイの主要な輸出先である欧州などにおける牛や豚の疾病の影響 で、世界的に鶏肉需要が高まったことから、昨年4月以降は急激に上昇した。 しかし、輸出需要を当て込んだ生産増が急ピッチで進んだことから需給のバラ ンスが崩れ、好調を維持していた卸売価格の低落傾向を誘発しているものと思 われる。
こうした卸売価格の安値傾向は今後も続く可能性が高い。政府の農業経済に 関する調査部門によると、今年のブロイラー生産量が前年比1.5%増の9億7千 万羽となる一方、農家販売価格は、ブロイラー1kg当たり同2.8%安の28.6バー ツ(約86円)に低下すると予測されている。タイのブロイラーの農家販売価格 と卸売価格との間には強い相関関係が見出せるため、卸売価格も同様の低下傾 向を示すものと思われる。 ◇図:農家販売価格の推移◇
一方、卸売価格と同様に大幅な上昇を見せていた小売価格も、2001年9 月以降は下落に転じている。99年以降、小売価格は低下傾向で推移していたが、 輸出需要にけん引された卸売価格の大幅な上昇により、2001年6月には一 気に99年の値を越え、8月には過去最高を記録した97年の水準にまで達してい た。しかし、11月のバンコク市場におけるブロイラー1kg当たりの小売価格は、 ピークとなった8月と比べて4.8%安の50.1バーツ(約150円)にまで下落して いる。 小売価格の下落は、99年の中盤以降、前年同月を上回ることなく低下傾向で 推移していただけに、2001年9月の反落は、小売価格の急上昇に市況が冷静に 反応したものと言える。小売価格は、12月には再び上昇する気配を見せている が、タイブロイラー加工輸出協会によると、2002年の鶏肉輸出は前年比5.1 %増の46万トンに止まると試算されていることから、生産量が予測以上に増加 した場合は小売価格の低迷傾向が再び誘発される可能性もある。 ◇図:小売価格の推移◇
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