シドニー駐在員事務所 幸田 太、粂川俊一
ひとくちMemo ニュージーランド(NZ)の牛肉生産は、豪州以上に草地に依存しており、 放牧肥育がほとんどを占め、穀物肥育は例外的である。年間のと畜は、生乳生 産と同様に牧草の発育とリンクしており、NZの秋にかけての 3 〜 5 月にピ ークを迎え、その後は冬場の 9 月に向けて大きく減少していくという季節型 を示す。このため、最低となる 9 月ごろの生産量は、ピーク時である 5 月ご ろの 3 分の 1 程度となる。豪州の牛肉生産は肉専用種が主体であるが、NZは、 肉用牛の 3 分の 1 程度が乳用種または乳用種・肉用種の交雑種である。酪農 部門から供給される乳用種雄牛は、多くが去勢しないまま飼養される。牛肉生 産は酪農部門と同様に、輸出への依存度が高く、原皮などを含むすべての肉牛 関連生産物のうち、金額ベースで約 8 割が輸出に振り向けられるため、肉牛 生産もまた、国際価格の影響を強く受けている。 今回訪れた「ファイブスタービーフ」は、NZの南島のクライストチャーチ から国道 1 号線を南へ約150km、17世紀にアッシュバートン川の河口に開かれ た人口約15,800人の街にあり、NZ唯一の大規模フィードロットである。1990 年12月に伊藤ハム(株)により設立され操業を開始した同社は、収納可能頭数 15,000頭、総面積500ha、穀物産地である地理的条件を生かし、豊富な穀物を 主飼料としている。生後平均18ヵ月齢の素畜を厳選した契約生産者から導入し、 240日以上の肥育を行い、年間を通じて、定時、定量、均質な肉牛を出荷して いる。 ファイブスタービーフでは、NZで唯一の先駆的な牛肉の安全に配慮したフ ィードロットとして、NZ政府の品質認定機関であるAgriqualityによる 「Safety Beef」プログラムを実践しており、肥育素牛生産農家から処理加工 場に至るまで品質管理マニュアルの策定、Agriquality検査官による疾病検査、 農場監査、農場における飼料、水質検査、当該プログラムの実践監視、証明の 発行、地域環境への配慮等が行われている。さらに独自に、成長ホルモンの不 使用、非遺伝子組み換え飼料の給餌も行われ、厳しい安全管理プログラムが実 施されている。
ファイブスターフィードロットの全景。西に サザンアルプスの山々を望み、東に南太平洋を 望む。周囲は南島でも有数の穀物地帯となって おり景観が美しいNZの中でも、山と海と穀物 畑の眺めはひときわ美しい。周辺には、環境に 配慮し約8,000本の植樹が行われた。 |
フィードロットの正面玄関。穀物飼料を搬入 するトラックの計量風景 |
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素牛の搬入パドック。牛にストレスを与えな いため、搬入牛の追い込みや肥育牛の健康チェ ックは馬を用いて行われる。 |
飼料となる穀物。手前の乾牧草は、フィード ロット近郊のカンタベリー地域を中心に入手す る。飼料の配合は牛の健康に留意した独自のも のである。年間約10万トンの穀物等の飼料を消 費する。 |
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NZでは1999年7月から段階的に家畜のトレ ーサビリティ確保のため生産されるすべての牛 に耳標の装着が義務化されている。 |
南太平洋を望むパドックでの肥育風景 |
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出荷を待つ肥育牛。肉専用種のアンガス種を 主体に肥育されている。出荷体重は約700〜800 kg |
すべての排水と雨水は貯水槽に貯水され、固 体と液体に分離され、それぞれ契約農家の農地 に還元される。環境に配慮してリサイクルされ ている。 |
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