アルゼンチンの去勢牛取引価格の現状
不安定な為替相場や出荷頭数の乱高下から取引価格の予測は不可能
今年2月に変動相場制に移行したアルゼンチンの為替相場は、3月中旬まで
1ドル=2.5ペソ以下で推移していたが、3月下旬1ドル=3ペソ近くまで下落し、
市中ではペソをドルに換金したい市民が、Cambio(両替商)の前で長蛇の列を
成した。物価は目に見える形で上昇し、各新聞誌上では連日、どのような品物
が何%値上がりしたと報じている。この中でも特に、年間1人当たり約63kgを
消費する牛肉の価格動向等には関心が高いようである。
為替相場が安定しないため、取引価格の予測が不可能であり、庭先取引より
も代金決済の早いといわれるリニエルス家畜市場でも、生産者が代金を受け取
るまでに1ヵ月〜1ヵ月半かかるとされている。このため、肉牛生産者は、出荷
時期と入金時期の時間差中に起こるペソ下落による損失を避けようとして、経
営上のダメージが大きくならない最低限の頭数しか出荷しなくなっている。ま
た、3月末には毎日のように雨が降り、道路の整備状況が悪い地方の道路はす
ぐに冠水してしまうため、出荷が停滞する傾向にあり、リニエルス家畜市場の
上場頭数は減少傾向にあるとともに、出荷頭数に乱高下が生じている。このた
め、価格は上昇傾向にはあったものの、3月下旬からさらにその傾向を強め、
去勢牛は3月22日から4月2日の10日間に約45%の急激な価格上昇を招いた。
EU向け高級牛肉の輸出が好調であるが、今後の数量を手当できるか心配の声も
また、昨年3月に口蹄疫が発生したことで、EUなどにより輸入禁止措置が
取られていたが、今年2月1日、EUは最後まで発生がみられた3州を除き解禁し、
その後現在では、全州からの輸出を認めている。アルゼンチンのEU向けの高級
牛肉枠(ヒルトン枠)は、年間2万8千トンであり、毎年7月から翌年の6月まで
が対象期間である。本年2月から再開したヒルトン枠の輸出量は開始月の2月が
約1,600トンで、2000年の月平均約2,200トンの約7割であった。しかしながら、
3月には約4,600トンを輸出しており、2000年におけるひと月の最高輸出量2,80
0トンと比較すると、輸出にかなり力を入れていることがうかがえる。
また、ヒルトン枠内で輸出される牛肉1kg当たりのFOB価格は、2000年は平均
7.2ドル/kg(約929円:1ドル=129円)であったが、2002年2〜3月は平均3.8
ドル/kg(約490円)となっており、通貨切り下げによる価格競争力が強まっ
ていることやヒルトン枠の消化のためにロイン系以外の部位が多く輸出されて
いることが原因となっている。
アルゼンチン食肉産業協会(AIAC)のサマランコ会長は、価格の高い高級牛
肉の取引量がこのままの傾向を保って推移すれば、国内価格が上昇するとの懸
念を示すとともに、輸出向け融資の停滞や軽油の値上がりに対して農家や運送
業者が出荷・運送ストライキを実施していることで絶対的頭数が不足し、今後
の輸出、特にEU向け輸出数量は減少するのではないかとのコメントも出してい
る。
◇図:去勢牛の取引価格と上場頭数の推移◇
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