輸出税をめぐる関係業界の動きと直近の経済情勢 ● アルゼンチン
農産品への輸出税導入の決定に農業団体が強く反発
2002年1月に通貨切り下げを実施したアルゼンチンでは、同国政府が大
幅な税収不足をカバーするため農産品への輸出税導入を決定したことから、農
業団体などがこれに強く反発している。
アルゼンチン経済省は3月4日付け決議11/2002で、穀物などの1次産品に10
%、食肉を含む畜産加工品・工業品に5%の輸出税を賦課した。さらに、同省
は4月5日付け決議35/2002で、穀物、油糧種子、穀粉、植物性油などの農産品
に対する輸出税の税率を20%に引き上げることを決定した。なお、食肉を含む
畜産加工品は5%と据え置きとなった。
同国の輸出税は、1800年代後半から重要な税収源として主に穀物と牛肉に課
せられていたが、90年代の初めに提唱された新経済自由主義政策の下、ほとん
どの輸出税が廃止された。2002年1月に就任したドゥアルデ大統領は、就任当
時、農産品に対し輸出税の賦課を行わないと公約していたが、税収の大幅な減
少を受け、通貨切り下げで恩恵を受ける業界が税収を支えるべきとの考えから
輸出税導入に踏み切ったものとみられる。この決定に対し農業団体などが強く
反発しており、一部の団体は農業ストライキを実施した。なお、この課税に対
し抗議していたパウロン農牧水産食糧庁長官の時評は4月15日に受理されるこ
ととなった。
輸出税の遡り適用に対し、輸出業者が業務活動の停止で反発
また、4月16日付け決議618/2002には、輸出税20%に分類されたものの課税
期間は、3月4日付け決議11/2002に遡って適用されるとの内容が盛り込まれて
いたため、今度は輸出業者が強行に反対するとともに、課税される場合であっ
てもどのような手続きとなるのか細則が策定されていないため、輸出業者は業
務活動を停止した。このため、総理大臣と生産大臣は決議618/2002で定めた
課税対象期間の遡りを撤回し、4月22日までには官報に掲載するとの声明を出
したものの、輸出業者は官報に掲載されるまでは信用できないとして業務活動
の停止を継続した。結局、4月19日付け決議654/2002が22日に官報に掲載され
たことにより、輸出税の20%課税の遡り適用は撤廃され、4月9日から賦課され
ることとなった。
預金の国債化などを盛り込んだ法案を国会で審議
また、これらの話と相前後する形で、4月22日から銀行業務が停止してい
る。デュアルデ大統領は、経済危機の最後の打開策として、@現在、強制的に
ペソ建てで定期預金化されている預金を、ドル国債化(10年債、利子1.9%、
為替レートは1.4ペソ=1ドル)またはペソ国債化(5年債、利子3.9%)する。
Aペソ普通預金をドル国債化(3年債、利子2%、為替レートは1.4ペソ=1ドル)、
または、ペソ通貨の普通預金として継続するとする法案を国会に提出している。
大統領は中央銀行からドルが流出することを防ぐため、国会で当法案が成立す
るまでの間、銀行業務を停止させるとしていたが、鍋たたきなどの抗議行動や
地方州におけるスーパーマーケットの襲撃が起こったため、銀行の業務停止期
限は4月25日までと宣言した。法案は国会に提出されているが、反対意見が多
く成立の見込みは立っていない。
なお、決議654/2002で20%課税の遡り適用が実施されることはなくなり、
22日からの穀物取引の再開を期待していた輸出業界も、銀行業務停止により極
少量の取引のみにとどまっている。
輸出税をめぐる決議の経緯
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