鶏卵の生産量、大幅増の計画が進行 ● シンガポール
東南アジア最大規模の養鶏場を建設
シンガポール資本と中国のシャンドン・リウ社との合弁により、数年前に設
立されたN&N農業社は、シンガポール国内に総工費2,500万シンガポールドル
(約18億円:1シンガポールドル=72円)を投じて採卵鶏100万羽規模の養鶏場
を建設中である。同養鶏場は、2003年に完成予定であり、完成のあかつきには
東南アジア最大規模の養鶏場となる。
今回のN&N農業社の計画は、各8万余羽収容可能な採卵鶏舎を12棟、育すう
舎を4棟、選別作業棟を1棟建設し、さらに1時間当たり10トンの処理が可能な
飼料工場を併設するという大規模なものである。同社は、現在、飼料をマレー
シアのゴールド・コイン社から購入しているが、飼料工場が完成すれば外部か
ら購入の必要がなくなる。採卵鶏舎と育すう舎は、土地面積の縮小と作業の省
力化のため、高密度での飼養が可能な閉鎖鶏舎を採用することとしており、す
でに一部は稼動している。
新鶏舎には高温多湿対策
各採卵鶏舎は、93×13×5.5メートルの設計となっており、ビッグ・ダッチマ
ン社の8段式ケージが設置される。また、各鶏舎には1.5馬力48インチの冷房兼
換気用扇風機20基が設置される。育すう舎も採卵鶏舎と同様の設計になって
おり、内部には同社のスターター・バタリー・ケージが設置される。
シンガポールの養鶏場は、通常、開放鶏舎だが、日中の最高気温の平均が33
℃という熱帯の高温多湿気候のため、へい死率が高く、飼料効率が劣り、産卵
率の向上も困難だった。閉鎖鶏舎にすることで、舎内は常時22〜23℃に保つこ
とができるため、N&N農業社では、生産効率が向上することを期待している。
また、都市近郊の養鶏で特に問題となるハエなどの衛生害虫の発生についても、
扇風機による常時対流効果により鶏糞から発生するアンモニアの舎内濃度を低
くすることができ、防除効果があるとしている。
新工場建設で、政府の鶏卵生産目標を達成の見込み
シンガポールは、国土が狭あいであることから、畜産業の立地を制限してお
り、鶏卵の自給率が約35%である以外、ごく少量の牛乳と山羊乳が生産されて
いるにすぎない。鶏卵も需要量の半分以上は、隣国であるマレーシアやインド
ネシアからの輸入に頼っている。
シンガポール政府は、国内における鶏卵の生産量目標を日量160万個、自給
率では2000年現在の35%を53%まで引き上げることを目標としている。現在の
生産量は明らかにされていないため、上記の数字から逆算すると、現在の生産
量は1日当たり約106万個、国内の需要量は同約302万個に相当する。N&N農業
社ですでに稼動中の鶏舎での成績は、30万羽の採卵鶏が1日当たり25万個の生
産があるので、産卵率83%程度に相当する。これを全体の完成時に当てはめる
と、100万羽の採卵鶏が1日当たり83万個の鶏卵を生産することになり、他の
業者が減羽などをしなければ、供給量が日量約190万個まで上昇する。
シンガポールの鶏卵価格は、日本からの空輸によるものが1個1シンガポー
ルドル(72円)、国内で生食用に生産したものが同75セント(54円)と日本人
をターゲットにしたものはきわめて高い価格で販売されているが、通常のもの
は同12〜30セント(8.6〜21.6円)、マレーシアではさらに安値であり、大幅
な供給増加により、今後、大幅に値崩れを起こす懸念がある。
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