インドネシア、輸入食品に「ハラル」表示を義務付け


米国産鶏もも肉の輸入禁止措置を実質的に解除

 インドネシアの通商産業大臣は4月8日、インドネシア・イスラム協議会の
ガイドラインに従い、飲料を含むすべての輸入食料品にイスラム教徒が口にで
きることを示す「ハラル」表示を義務付けると発表した。これは、昨年に禁止
された米国産鶏もも肉の輸入も表示を行えば可能となることを意味しており、
米国との関係悪化を避けるための妥協策として注目されている。

 インドネシアは2001年、その前年から大量の安価な米国産鶏もも肉が流入し
鶏肉価格が暴落したことから、輸入許可証を丸鶏のみに与え、実質的にもも肉
の輸入を禁止する措置を講じた。従来、むね肉が好まれる米国では、国内で需
要が低いもも肉の輸出価格を有利に設定できるといわれる。インドネシアの通
関関係者によると、99年に約3,700トンであったもも肉の輸入が、2000年には
約1万2,700トンに急増し、その大部分が米国産とされている。


ハラル表示の徹底を条件に妥協

 一方、米国は、インドネシア産エビの輸入停止という報復措置を暗に示すな
どして同国の態度の軟化を図ってきた。4月上旬には通商代表部のゼーリック
代表がインドネシアを訪れ、メガワティ大統領との会談の中で、改めてもも肉
の輸入再開を申し入れている。米国から仲介の依頼を受けた通商産業省は、農
畜産物の生産・流通を所管する農業省およびイスラム協議会と直ちに調整に入
ったものの、イスラム協議会は、米国産もも肉を安易に受け入れることは、国
内の小規模養鶏農家を窮地に陥れるとともに国家の尊厳を傷つけることにつな
がるとして、断固阻むべきとの強硬な姿勢を崩さなかった。

 しかし、度重なる交渉の結果、態度を軟化させた同協議会は、ハラル表示を
徹底することによりもも肉の輸入も可能であるとの妥協案を示すに至った。こ
のときに示されたガイドラインに従い、通商産業省はすべての輸入食品にハラ
ル表示が必須であるとの前段の公示を行っている。同協議会は、米国内のイス
ラム団体と連絡を取り、米国内におけるハラル認定の体制を早急に構築したい
としている。さらに、豪州やニュージーランド、タイ、シンガポールといった
近隣諸国や、アイルランドなどのイスラム団体にも同様の協力関係を求めたい
としている。


国内外に抱える懸念材料

 こうした輸入品をめぐる動きの中で、国内の生産者や加工業者の意識も変わ
りつつあるようだ。品質を重視する先進国への輸出の実績を積んだ加工業者の
一部には、グローバル化の中での将来を見据え、逆に米国への輸出に向けて準
備を進める者もいると言われる。農業省も、広い視野を持ち始めた加工業者な
どに対し、国際的な競争力を自分で勝ち取る意志を持つことが重要だとして可
能な限りのサポートを行うと表明している。

 米国通商代表部は、今回のインドネシアの要求を大筋で了承したとされてお
り、近年両国間を隔ててきた鶏もも肉をめぐる案件が解決に向かう可能性も出
てきた。しかし、インドネシアの中でも、国際貿易のルールを重視して米国と
の摩擦を避けようとする通商産業省と、国民の拠り所であるイスラム教の真髄
を貫こうとするイスラム協議会や国内養鶏産業の衰退を危惧する農業省との温
度差は依然として大きい。また、米国内でのハラル表示に対する鶏肉業界の反
応が不透明であることや、他の食品の輸出国が当表示に対応できるかという問
題もあり、今後もこの推移を見守る必要があると思われる。

元のページに戻る