米農務省、大規模畜産に対する環境規制案の影響分析報告書を発表
改正案では、CAFOの対象拡大と家畜ふん尿施肥量の制限を提案
米農務省(USDA)は先ごろ、昨年1月に官報公示された大規模畜産経営
体(CAFO)に対する環境対策関係規則改正案の実施による影響を分析した
報告書を発表した。この規則改正案は、水質保全を目的として、米環境保護庁
(EPA)が提案したもので、その主な内容は次のとおりとなっている。
1. CAFOの定義の変更
現行の定義では1,000家畜単位(55ポンド(約25kg)以上の豚2,500頭、肥育
牛1,000頭、乳用成牛700頭、採卵鶏およびブロイラー10万羽(施設等により異
なる場合あり)などに相当)以上と規定されているが、これを最も厳しいオプ
ションで300家畜単位以上に引き下げる。なお、USDAによれば、このオプショ
ンで全国の畜産経営体の上位20%、家畜ふん尿の70%が規制下に置かれることに
なる。
2. 栄養分管理計画(NMP)の作成と実行
各CAFOは、家畜ふん尿の施肥量を作物の要求量以下に制限する栄養分管理計
画(NMP)を作成し、これを実行することが義務付けられる。なお、これに伴
い各自の農地で処理できない余剰家畜ふん尿は、商用肥料の代替あるいは補完
用として利用する意志のある他の作物経営体などへ供給することを余儀なくさ
れる。
家畜ふん尿の受け入れ率ごとに生産への影響を試算
USDAはEPAの試算を引用し、NMPに伴う主要なコストとして、NMPの作成・管
理に係るものが1経営体当たり1,300ドル、家畜ふん尿の運搬に係るものが施
肥可能な土地への距離によってトン当たり0.007ドルから0.14ドル、などと見
込んでいる。
USDAの試算は、CAFOの定義を300家畜単位以上とするオプションが採用され
たとの仮定で、家畜ふん尿の他の経営体による受け入れに関するシナリオを3
種類(@作物生産者が当該地域における作物の必要栄養量の40%に相当する
部分について、家畜ふん尿を受け入れる、A同30%、B20%)想定し、計量
モデルを利用して行われた。なお、USDAは、家畜ふん尿の受け入れについて、
90年代の後半にトウモロコシと大豆を栽培する土地の9〜17%にしか家畜ふん
尿が使用されなかった状況から、実際のところ難しいのではないかとの見方も
示している。
低受け入れ率のシナリオでは、CAFOの地域移動、家畜減少の影響も
@の受け入れ率の高いシナリオでは、生産への影響は、南東部を除く各地域
での家畜単位の減少率が1%未満となるなど、極めて限定的なものと試算され
た。Aの(同)中程度のシナリオでは、南東部で家畜単位が14%と減少となっ
た一方で、北東部およびデルタ地域でわずかな増加となった。Bの(同)低い
シナリオでは、南東部、アパラチア、山岳部で19〜30%の減少となった一方で、
コーンベルト、北平原地域などでは5〜11%の増加となり、NMPの実施が家畜ふ
ん尿施肥の可能な地域へCAFOの移動を促進する影響をもたらすことが示唆され
た。
生産減による価格上昇や飼料コストの低下で、純収益は増加との楽観的な見込み
USDAは、当該規則案の導入により、家畜単位は減少するものの、供給減で価
格は上昇し、一方で、飼料穀物への需要減によって飼料穀物価格が下落するこ
とから、全体としては、NMPに関するコスト増加が十分相殺され、純収益は@
のシナリオで0.5%、Bのシナリオで16%増加するという楽観的な見込みを示
した。
同改正案は、昨年7月に締め切られたパブリックコメントなどを検討中であ
り、今年12月には最終規則として決定され、来年1月には公布される予定となっ
ている。
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