バーベキュー・シーズン到来に向け、消費拡大による価格回復に取り組む米食肉業界


 屋外でのバーベキュー好きな米国人にとって待望の季節がやって来る。最近
の生体価格の急落もあり、米国の生産者団体は、牛肉、豚肉ともに、こうした
バーベキュー・シーズンにターゲットを絞ったステーキ肉などの消費拡大活動
をはじめとする各種取り組みを通じて価格の回復を図ろうと躍起になっている。


牛肉はバーベキューの主導権を握る男性をターゲット

 まず、牛肉についてであるが、先月のカンザス州における口蹄疫に関する誤
報騒動以降、内外の牛肉需要の減退、生体重やと畜頭数の増加もあり、生体牛
価格が下落しており、米農務省(USDA)が4月15日に出した見通しでも、今年
前半は前年を下回る価格水準となることが予想されている。

 こうした中で、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、消費者にバーベキュ
ー回数を増やしてもらい、その食材として牛肉を選択してもらうための宣伝活
動や消費者とのコミュニケーション活動などを5〜9月の期間に実施する。これ
には、200万ドル(約2億6千万円:1ドル=129円)のチェックオフ資金が充て
られる予定である。重点地域としては、ロサンゼルス、ダラス、ワシントンDC
/ボルチモア、ボストン、デトロイト、ニューヨークなどの主要都市が選ばれ、
バーベキューの主導権を握る25〜54歳の男性に焦点を当てた、バーベキューで
最も人気の高いステーキに関するラジオ・スポットの放送や主要スーパー・チ
ェーンでの各種ディスプレーの設置などが行われる。特に、ラジオ・スポット
については、この夏の間に、ターゲットとなる男性の72%が6回は耳にするよ
う計画されている。

 さらにNCBAは、・米国内の店舗において豪州およびニュージーランド産牛肉
を挽き材の一部として今後試験的に使用する意向を明らかにしているマクドナ
ルド社(注:これまで同社は国内店舗では米国産牛肉のみを使用)と連携し、
逆に同社の世界約3万店舗において米国産牛くず肉を用いるという構想の実現
に向けた共同作業を開始すること、・日本における米国産牛肉の安全性に関す
る信頼回復のための米国食肉輸出連合会(USMEF)によるキャンペーンを支援
すること、なども明らかにしている。


98年のような大暴落を回避するため豚の生産者団体は長期的な戦略作りにも着手

 一方、豚についても、国内における牛肉や家きん肉の供給量の増加による需
要の減退などから、2月末以降生体豚価格が急落し、USDAの見通しでは、年間
を通じて見ても100ポンド当たり平均価格が前年比13%安の40ドル(約114円/
kg)近くまで下がることが予想されている。

 98年のような大暴落の再来を懸念する全国豚肉生産者協議会(NPPC)は、短
期的な価格回復策として、学校給食プログラムや緊急食糧援助プログラムなど
のためのUSDAによる豚肉の買い上げを要請するとともに、と畜能力を超えた生
産増を招かないための長期的な戦略作りにも着手したとしている。

 また、牛肉の場合と同様に、豚肉チェックオフ制度の実施機関である全米豚
肉ボード(NPB)は、「炎ある所に豚肉あり(Where There's Pork, There's 
Fire)」と銘打った、小売店におけるバーベキュー用豚肉製品の販売促進キャ
ンペーンを開始するとしている。

 なお、牛肉、豚肉双方にとっての共通のライバルである家きん肉に関し、ロ
シアにおける米国産家きん製品の輸入禁止措置が米国内における家きん肉の供
給増を招き、これが食肉市場を圧迫しているとして、NCBAやNPPCなども、早期
全面解禁を強く要請している。(注:4月15日には、ロシア政府によって当該
禁輸措置を正式に解除する旨が発表されたが、依然として輸入が滞っている状
況にあるとされている。)米国でも牛肉、豚肉、家きん肉それぞれの業界によ
る熾烈なパイ(消費者)の奪い合いは終わりそうにない。

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