◇絵でみる需給動向◇
フランスの政府関係機関であるフランス畜産振興会(OFFIVAL)は、EU加盟各 国でのと畜場における牛肉取引価格を基に算出した、2001年のEU各国におけ る肥育牛生産者平均価格を公表した。これによると、2000年末にEUで拡大し た牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃を受けて、生産者価格は大きく低下したこと が明らかとなった。EU平均では、と体重量換算で100s当たり260.2ユー ロ(約3万円:1ユーロ=116円)となり、2000年平均と比較して14. 6%もの低下となっている。また、生産者価格の低下に併せ、市場への出荷抑制 など自家保留分の増加による生産コストの上昇から、肥育牛生産農家の収益も大 きく減少することになった。EU統計局が発表した2001年の農業収入見込みに よると、肉牛生産農家の実質生産額は、牛肉消費の低迷により同10.2%の減 少となっている。 EUの肥育牛生産者価格(と場出荷価格) 資料:OFFIVAL 注:2001年は1/1〜11/18までの平均
各国別の状況を見ると、価格作成時点でBSE発生がなかったフィンランドを 除き、各国とも大幅な下げとなった。特に、EUの主要肉牛生産国であるドイツで は、BSE問題の新たな発生により域内最大といわれるの牛肉消費の低下を招いた ことから、生産者価格は2割を超える低下となった。一方で、BSEの大発生国で あるイギリスでは、口蹄疫の発生で移動制限による出荷抑制など肉牛農家への影 響はあったものの、価格の低下率はそれほど大きくなかった。
このような中で、BSE問題の再燃を契機に大きな落ち込みを見せたEUの肉牛価 格は、その後のEUレベルでの価格対策の実施や各国での消費回復策を受けて、わ ずかながらも上向きに転じつつある。2002年1月に開催されたEUの牛肉管理 委員会では、最近の牛肉価格について報告がなされ、加盟各国で実施されている 介入買上の成果などにより、去勢牛を中心に2001年末から価格は上昇傾向に あることが示された。通常、この時期の肉牛価格は、クリスマス需要など一般消 費の拡大により上昇傾向で推移するため、価格回復へと直接的に結びつけるのは 難しいが、一部加盟国では、BSE問題に伴う急激な肉牛価格の下落以降、初めて 対前年比でプラスに転じるなどの明るい兆しがでているのも事実である。肉牛生 産者にとっては、さらなる価格回復が期待されている。 ◇図:主要生産国の成牛価格動向◇
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