メキシコにおける食肉の小売事情

ワシントン駐在員事務所 渡辺裕一郎、樋口英俊


 ここサンファン市場は、首都メキシコ市
の旧市街にある生鮮食料品主体のメルカド
(市場)。食肉関係の店舗は20軒ほどで、
食肉専門店(畜種別にも分かれている)と
内臓専門店とがある。顧客の大半が食肉小
売店や飲食店であり、業務用として仕入れ
ていく場合が多いが、家庭の主婦の姿も見
られるという。
ひとくちメモ

 メキシコにおける食肉需要は、経済の回復による所得の増大によって近年増加
傾向にある。2000年における一人当たりの食肉消費量は、牛肉が23.2kgと最も
多く、近年伸びが著しい家きん肉が22.7kgと続き、豚肉はこれらの半分程度の
11.6kgとなっている。

 小売形態としては、常温肉の方が新鮮との見方も根強く、メルカド(公設市場)
やティアンギス(屋台式の曜日を定めて毎週仮設される市場)などで常温のブロ
ック肉や丸どり(鶏肉)として販売される割合が最も多いが、スーパーマーケッ
トで販売される冷蔵のカット肉の割合も増加している。

 食肉を使った特徴的な料理としては、トウモロコシ粉や小麦粉でできたトルテ
ィーヤで肉と野菜を巻いて食べるタコスや、ファヒータと呼ばれる薄くスライス
した肉と野菜の炒めものなどが「メキシコ料理」としてよく知られている。この
ほか、変り種としては、ポソレと呼ばれる大粒のトウモロコシを煮込んで豚の鼻
や耳が刻んで入っている料理や豚足の燻製(湯で戻して酢漬けにして食す)など
も庶民に親しまれている。
 

 

 サンファン市場内の豚肉専門店。近
隣のと畜場から毎日枝肉を搬入し、店
内で解体後、ブロックで販売する。冷
蔵の陳列棚はほとんど使われておらず、
棚の上にゴロゴロと置かれたロースな
どの塊が常温にさらされている。

    
 メキシコでは、ハム、ソーセージな
どの需要も根強く、タコスの具などに
も用いられる。サンファン市場では、
こうした食肉加工品はチーズや乾物な
どのいわゆる保存食と一緒に売られて
いる。写真左のチョリソ(チリで味付
けしたソーセージ)の隣には、スペイ
ン由来のハモンセラノと呼ばれる生ハ
ムが店先にぶら下げられていた。
 メキシコ市の中心部にある地域市場
内の食肉小売店。豚肉は週3回、牛肉
は週1回、いずれもと畜場から枝肉で
仕入れ、店内の冷蔵庫内で解体。ここ
の冷蔵陳列棚は、サンファン市場と異
なりしっかり稼動しており、客の要望
に応じてブロック肉をカット、スライ
スして販売している。

    
 スーパーGは、メキシコ市内に60店
舗を有する大手スーパーグループの中
規模展開チェーン店。訪問した店舗の
1日当たりの集客数は約2,500人。食
肉販売エリアには、店内でスライスし
た精肉パックが所狭しと並ぶ。牛肉の
需要は1年中安定しているが、豚肉は
9月の独立記念日と12月のクリスマス
・シーズンの需要が多いという。

  豚の皮はぎ方法は、米国、カナダと同様
に湯はぎが主体であり、皮は、写真のよう
なフライにしたチチャロンと呼ばれるスナ
ックとしても売られている。一袋(250g)
で21ペソ(約302円:1ペソ=14.4円)

 フランス資本のハイパーマーケット
のカルフールはメキシコにも7年前に
進出。牛肉、豚肉ともに国産のみを仕
入れ、店内でスライス、包装を行って
いる。市の郊外には、食肉や野菜果実
等の生鮮食品を扱う独自の配送センタ
ーを有し、国内19店舗をカバーしてい
る。

    
 カルフールでの売れ筋は、牛肉が焼
肉用のロイン系で、豚肉がモモやバラ
などである。特売されていた豚ロース
(写真)は、1kg当たり単価が389
ペソ(約560円)で、スーパーGの特売
とほぼ同じ値段であった(スーパーG
の通常販売価格は499ペソ(約719円))。
メキシコ国旗と同じ配色のステッカー
には、「誇り高き100%メキシコ産」
と書かれてあった。
 ハリスコ州グアダラハラ市郊外のタ
コス屋の店先では、串刺しの豚肉が回
りながら火であぶられていた。これは
タコス・アル・パストールと呼ばれ、
火が通った外側からそぎ落とし、トル
ティーヤの具にして食べるタコスであ
る。

    
 グアダラハラ市郊外のレストランで
出されたカルニ−タ(写真中央:豚肉
をラードで揚げたもの)。タコス・ア
ル・パストールやチョリソ、オレハ
(写真左下:豚の耳を揚げたもの)な
どを、焼いたトルティーヤの上に乗せ、
サルサ(ソース)をつけて食べる。

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