◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2001年の生乳供給量(乳 業会社などへの出荷量)は、EU15ヵ国全体で1億1,520万トン(速報値) と前年を0.2%上回る結果となった。EUの生乳生産は、生乳クオータの拡大や チーズ需要の高まりなどを背景に、ここ数年、比較的安定した推移を見せている。 当初、2001年の生乳供給については、EU各国での酪農家戸数減少やイギリス などでの口蹄疫発生を背景に、おおむね減少と見込まれていた。しかし、牛海綿 状脳症(BSE)問題の再燃・拡大による肉牛価格の低迷が乳用経産牛の農家保留 傾向を高めたことや、イギリスなどでの口蹄疫発生は乳牛にそれほどの被害を及 ぼさなかったことなどが幸いし、結果的に前年並みを維持することとなった。 EUの生乳供給量 資料:ZMP、Eurostat 注:2001年の数値は速報値
生乳供給量が比較的順調に推移する中で、チーズ生産は引き続き増加を見せて いる。2001年のチーズ生産は、EU15ヵ国全体で716万トンと前年比2. 9%の増加となった。これは、食生活の多様化などで拡大するEUのチーズ需要が 主な要因として挙げられる。EUの1人当たりチーズ消費量は、95年の16.6 sが2001年には18.8s(推定値)まで増加しており、今後もさらなる拡 大が見込まれている。このような状況を反映するかのようにチーズ価格も堅調に 推移し、これが生産をさらに促す要因ともなっている。オセアニアなど主要生産 国や東欧諸国からの輸出力が高まりつつあるものの、他の乳製品生産と比較した 収益面での優位性から、引き続き生産は増加するとみられている。
一方、チーズを除く乳製品は、生産、価格ともに低下傾向を見せている。中で も脱脂粉乳については、EUでの飼料需要の停滞や国際市況の変化が影響し、価格 は前年比で2割を超える大幅な下落となっている。また、バターについては、2 000年後半から国際市況の好転に伴い一時的には回復傾向を見せたものの、世 界的な供給過剰などで価格は再び下降に転じている。また、生産、価格両面に影 響を及ぼすEUのバター介入在庫量も、民間在庫補助の開始により一時的には減少 となったものの再び増加に転じており、2002年1月末現在6万2千トンまで 拡大している。動物性脂肪分が敬遠される消費者し好の中で、EUのバター需要は 低迷を続けている。EUは2002年1月25日に輸出補助金の引き上げを2ヵ月 連続して実施するなどの対策を講じているが、国際市場の競争激化が伝えられる 中で、当面の市況回復は見込めそうにない。 ◇図:EUのバター介入在庫量◇
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