◇絵でみる需給動向◇
フランスの政府関係機関であるフランス畜産振興会(OFFIVAL)は、2001 年のEU各国における肉豚生産者平均価格を公表した。これによると、2000年 末にEUで拡大した牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃を受けて牛肉から他の食肉へ の代替需要が高まったため、豚肉の取引価格も跳ね上がり、生産者価格は各国で 上昇することとなった。EU平均の肉豚生産者価格を見ると、と体重量換算で10 0s当たり171.6ユーロ(約2万円:1ユーロ=116円)となり、200 0年平均と比較して21.1%もの上昇となっている。また、生産者価格の上昇 に伴い養豚生産農家の収益も大きく向上している。EU統計局が発表した2001 年の農業収入見込みによると、養豚生産農家の実質生産額は16%を超える高い 伸びを示している。
2001年の肉豚生産者価格は、各国で軒並み上昇となったが、これまでの価 格が低迷を続けていたことも背影にある。EUの豚肉価格は、「価格上昇→生産過 剰→価格下落→生産縮小」の波を繰り返しており、今回の動きもそうした流れに 沿ったものといえる。各国別の状況を見ると、ドイツ、フランス、デンマークな どEUの主要豚肉生産国は、いずれも2割を超える価格上昇となっており、各国で の養豚経営基盤はとりあえず安定する結果となった。 EUの肉豚生産者価格(クラスE) 資料:OFFIVAL 注:2001年は1/1〜11/4までの平均
このような中で、域内需要の拡大を背景に堅調に推移したEUの豚肉価格は、一 転して下降局面を迎えている。これは、高値感を持った消費者の豚肉離れや、健 康志向を反映する中で好調に拡大する鶏肉の消費、また、ゆっくりではあるが着 実な回復を見せる牛肉需要などが要因にあるとされている。2002年1月現在 の価格動向を見ると、BSE問題の再燃以前となる前々年同期の価格水準と比べる と、依然としてプラスを維持しているものの、市場関係者を中心に引き続き安値 感が漂っており、豚肉需給は緩和傾向が続くとみられている。2001年の口蹄 疫発生により、豚肉輸出が縮小したフランスでは域外への輸出拡大を期待する声 もあるが、一方で、ポーランドなどEU加盟を控えた中東欧諸国からの輸入増の動 きもあるだけに、当面、豚肉価格の先行きは不透明な状態となっている。 ◇図:主要生産国の豚枝肉価格動向◇
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