EU委員会、EU加盟交渉での農業分野の計画を提案


新規加盟国に対する考え方を提示

 EUへの加盟を希望する国は現在、ポーランド、ハンガリーをはじめとする中東
欧諸国10ヵ国に加え、キプロス、マルタおよびトルコの計13ヵ国に上る。このう
ち、トルコを除く12ヵ国については、加盟に向けた交渉がすでに開始されている。
また、交渉の遅れが目立つルーマニア、ブルガリアを除く10ヵ国については、早
ければ2004年にもEUへの加盟が実現する見通しである。こうした中、EU委員会は
1月30日、EU加盟交渉での農業分野の戦略(Strategy)を提案し、共通農業政策
(CAP)の中で新規加盟国をどのように取り扱っていくかの考え方を示した。


すべての加盟国に1つの農業政策のみを適用と強調

 EU委員会のフィシュラー委員(農業、農村開発、漁業担当)は、今回の提案に
ついて「移行期間後は、すべての加盟国に対して1つのCAPが適用され、2つの
農業政策が存在するわけではない」と述べ、加盟候補国に対し農業構造の改革に
向けた早急な対応を迫った。提案の概要は次のとおりである。

1.農業関係支出総額

 新規加盟国(10ヵ国)に対するEUの農業関係支出は、ベルリン首脳会議で決定
された財政的な枠組みを遵守するものとなっている。項目別の支出見込みは下表
のとおりである。なお、直接支払いに関しては、各国が支払った額について翌年
EU予算から充当される仕組みのため、2004年は計上されていない。



2.農村開発の推進

 新規加盟国の農村地域が抱える構造的問題の解決を図るため、加盟後の農村開
発対策については、EUの補助率限度を80%とする。

3.準自給農家に対する特別対策

 加盟候補国では多くの準自給農家(小規模零細農家)が存在するが、経済的に
存続可能な経営体への転換を促すため、定額の補助金(最大750ユーロ(約8万
7千円:1ユーロ=116円))を創設する。

4.直接支払いの段階的引き上げ

 直接支払いの性急な導入が、低い生産性や生産基準、高い潜在失業率などの構
造的問題の解決を妨げる懸念がある。加盟当初は既加盟国の25%程度の水準に抑
え、その後2年間で5%ずつ引き上げる。最終的に2013年に100%の水準に段階的
に引き上げていく。

5.国別の上乗せ支払い

 加盟前の補助水準が加盟後導入される直接支払いを上回っている場合には、農
家に対する激変緩和措置として、EU委員会の承認を得て、加盟前の補助水準を上
限とした上乗せ支払いを実施できる。ただし、補助の合計額は、既存の加盟国で
の直接支払いの水準を超えることはできない。

6.直接支払いの簡易的な実施

 新規の加盟国では、当初3年間の移行措置として、簡易的な直接支払い方法を
選択できる。すべての農地が対象となり、直接支払いの単価は、直接支払い予算
と農地面積から計算される。直接支払いの交付に関して管理機能が適正に働いて
いない場合には、その後も簡易的な直接支払いが継続され、問題の解決まで直接
支払いの引き上げは凍結される。

7.生乳生産枠の設定

 生乳生産枠(ミルククオータ)については、97〜99年の生産統計データを参考
にして設定することを提案する。

元のページに戻る