食用、飼料用の中国産動物性製品を輸入停止(EU)


貿易への悪影響を勘案し、発送済みの輸出品は除外

 EU委員会は1月30日、EUで使用が禁止されている抗生物質などの残留問題にか
んがみ、食用または飼料用の中国産動物性製品の輸入停止を決定した。ただし、
ケーシング(腸)、海上で冷凍し最終パックされてEUへ直接陸揚げされる海産物
(甲殻類を除く)は対象外とされている。また、貿易への悪影響を小さくするた
めの措置として、1月30日までに中国から輸出された製品については、抗生物質、
殺虫剤などの残留についてモニタリング検査を行い、公衆衛生上問題ないとされ
れば、輸入が許可される。

 

総額で3億ユーロを超える製品が対象

 本問題をめぐる経緯は次のとおりである。

・2001年9月

 これまでに問題が見つかった中国およびベトナム産の食用エビについて、クロ
ラムフェニコール(抗生物質の1種で、EUでは94年から食用動物への使用が禁止
されている)などの検査体制を強化した。

・同年11月

 EU食品獣医局(FVO)が中国を訪問し、動物および動物性製品に対する抗生物
質などの残留問題に関して視察したが、その報告書(未公表)で、中国での対応
に大きな不備があることが指摘された。

・同年11月〜12月初旬

 クロラムフェニコールに汚染された中国産のエビ27.5トンがオランダ経由で
ドイツに入り飼料生産に使われた。このエビは本来であれば廃棄されるはずであ
ったが、魚の加工残さと混合されて、リサイクル飼料の原料となった。ドイツの
関係当局はその数週間後になってやっと、オランダの調査結果によりこの事実を
知らされた。このため、2002年1月22日のEU農相理事会で、ドイツ連邦消費者
保護・食料・農業大臣は、飼料の迅速警報システムの早期確立について要望した。

・2002年1月25日

 常設獣医委員会(SVC)において、中国産動物性製品のEUへの一時輸入停止に
ついて合意された。

・同年1月30日

 EU委員会は、食用または飼料用の中国産動物性製品の輸入停止を決定した。輸
入停止の対象には、ウサギ肉、家きん肉、蜂蜜、貝類、エビ、カニ、ペットフー
ドなどが含まれるが、これら品目の中国からEUへの輸出総額(2000年)は3億2,
770万ユーロ(約3,801億円:1ユーロ=116円)となっている。なお、対象とな
らない、外洋で獲れた海産物(甲殻類を除く)およびケーシングの中国からの輸
入額(2000年)は4億40万ユーロ(約464億円)となっている。


状況によっては、中国側の対抗措置も懸念

 EU委員会は、貿易再開に向けた必要な措置の実施について、中国当局と早急
に調整したいとしている。また、中国の現地報道によると、中国政府はEUと合同
の調査チームを編成し、EUが問題としている点について早急に調査を進める用意
があるとして、問題解決に向けた動きを示している。しかし一方では、EUの措置
に対する懸念も強まっている。EUの食肉業界では、今回の措置に対抗して、中国
側もEU産動物性製品の全面的な輸入禁止措置をとることもあり得るとして、その
動向に注目している。なお現時点では、動物の疾病問題に関し、中国はEU各国か
ら以下の食肉等の輸入を禁止している。

 BSE関連:全加盟国からの牛肉など

 口蹄疫関連:フランス、アイルランド、オランダ、イギリスからの牛肉、豚肉
       など

 アフリカ豚コレラ関連:スペイン、イタリア、ポルトガルからの豚肉など

 豚コレラ関連:ドイツ、オーストリア、スペイン、イタリア、イギリスからの
        豚肉など

元のページに戻る