豪州乳業メーカーがNZの酪農生産者を勧誘へ
生乳の安定的な供給源を求め、移住を勧誘
豪州の大手乳業メーカーボンラックは、ニュージーランド(NZ)の酪農生産者
を対象に豪州への移住を勧誘するキャンペーンを行った。同社は昨年、経営再建
のためフォンテラ(旧ニュージーランド・デイリー・ボード)と業務提携を行っ
たが、今回新たに、原料乳の安定確保を図ることを目的に、他国の酪農生産者に
も供給源を求め移住を働きかけたところ、NZの酪農家十数名が興味を示したとし
ている。さらに同社は、クインズランド州とニューサウスウェールズ州の酪農家
にも、同社の拠点であるビクトリア(VIC)州、タスマニア(TAS)州への移住
を呼びかけている。
同社は、業績悪化に伴う財政難から原料乳の買入価格抑制を余儀なくされたた
め、過去2年間で多くの原料乳供給者たる酪農生産者を失った。現在、同社の工
場では原料乳不足から処理能力を下回る処理量で稼動せざるを得ない状況となっ
ていると言われる。処理量を増やす方策として、失った酪農生産者を再び同社の
傘下に収めるのは困難と判断し、タスマン海を隔てたNZの酪農生産者を勧誘する
今回のキャンペーンを開始することになったとされる。
勧誘に当たっては、財政的なインセンティブはなし
今回の取り組みは「酪農生産者リクルートキャンペーン」とも言えるもので、
具体的には1月28日から1週間にわたってNZの北島において6ブロックで9回の
説明会が開催された。説明会では、豪州で酪農生産を始めるに当たって必要不可
欠な銀行融資の詳細、土地価格、乳牛価格などの情報をはじめ、生活費や教育問
題のような一般生活情報も提供した。同社は特に、NZでシェアファーマーや酪農
場所有者として酪農を始めることを望んでいる若い人々にアピールしたいとして
いる。
また、既にNZで酪農に従事している生産者へは、豪州の土地価格がNZより安い
ことなどから酪農場を設立するコストが安いということをアピールの主眼とした。
さらに、同社は勧誘に当たって、質の高い正確な情報を提供することに重点を
置き、財政的なインセンティブは与えていない。人々が新しい場所に移住するこ
とは重大な決定であることを理解しているが、このための準備を支援することを
通して良い関係を構築したいとしており、今回の勧誘の結果として、財政的な支
出をすることなく、原料乳供給を増やすことを期待している。同社のスタッフは、
NZの酪農家が移住を決定するに当たり、NZのフォンテラが同社に25%出資してい
ることが移住を推進するものと確信している。
90年代半ばにもNZからTAS州へ移住
同社へ原料乳を供給する酪農生産者が多く立地するVIC州の酪農生産者の団体
は、今回のキャンペーンに対して、国際価格が低下している時に処理量を増加さ
せる同社の努力には厳しい見方を示しつつも、おおむね歓迎の意を表した。この
キャンペーンにより、同州の熟練した酪農生産者の慢性的不足を解消するような
成果があるならば、前向きなことであるとしている。
同様に、TAS州の酪農生産者団体でも、既に同州の酪農生産者の約1割は90年
代半ばに同じような勧誘によって移住してきた者であり、今後同州の生乳生産量
を増やす計画もあることから、好意的に受け止めているようである。
今回のキャンペーンは、同社とフォンテラの業務提携に伴い移籍したかつての
NZ乳業界のスタッフが中心となって行われた模様である。業務提携による同社の
経営再建は、酪農生産者のNZから豪州への移住を伴うものに発展する可能性も生
じてきた。
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