ビナミルク社の売上高が大幅増(ベトナム)


政府系公社には少ない高い収益性

 ベトナム最大の乳業会社であり、政府系の公社でもあるビナミルク社は1月15
日、2001年の売上高が前年比58%増の3兆6,600億ドン(約318億円:100ドン=
0.87円)に達したと発表した。今回の同社の大幅な伸びは、乳製品輸出額が前
年比103%増の2兆1,600億ドン(約188億円)に達し、2005年の達成目標とした
水準を早くもクリアした好調な乳製品の輸出需要に支えられたものである。なお、
売上については、昨年のベトナムにおける企業の平均伸び率の4倍を上回る大幅
なものとなっている。

 ビナミルク社は、ベトナム政府がドイモイ(刷新)政策を進める中で、国営企
業だったものが工業省の所管の下で公社化されたものであり、本社をホーチミン
市に置いている。同国は巨額の財政赤字を抱えており、国際通貨基金(IMF)の
融資条件として公社の整理・民営化を条件とされているが、同社のような高い収
益性を有するものは少なく、整理・民営化も進んでいない。


国内市場は独占、低コスト生産による国際競争力も

 ベトナム国内の牛乳・乳製品市場シェアは、ビナミルク社86%、オランダのフ
リーズランド・コベルコ社系のフォアモスト・ベトナム社が9%、ネスレ・ベト
ナム社が3%、ドンナイ県立のロタミルクが2%となっており、ビナミルクの独占
状態が続いている。同社の主力製品は、輸入乳製品を原料とする加糖れん乳であ
るが、2000年以降は飲用乳や粉乳類を含むすべての乳製品の生産が増えている。
昨年のイラクをはじめとする中東諸国や米国向けの輸出用粉乳類の生産量は、前
年比99%増となっており、加糖れん乳に次ぐ主力輸出製品となっている。ベトナ
ムの生乳価格は、政府の公定価格が1s当たり3,500ドン(約30円)となってお
り、周辺諸国やオセアニアより高いが、労賃をはじめとする乳製品の生産コスト
が低いため、乳製品の国際競争力はあるとされている。また、同社の製品は、過
去4ヵ年連続で政府が選定するベトナム高品質製品上位十傑に選ばれており、同
社は品質面でも自信を持っている。


同社の独占状態には課題も

 同国の酪農はホーチミン市を中心とする南部に国内の乳用牛頭数約3万頭の90
%が集中しており、ビナミルク社がほぼ独占的に生乳処理を行ってきた。昨年同
社が買い入れた生乳は約63,000トン(前年比24%増)、金額にして2,100億ドン
(約18億円、前年比26%増)となっている。同社は、今年の売上目標を前年比18
%超増の4兆3,520億ドン(約379億円)、輸出額を同約7%増の2兆3,200億ド
ン(約202億円)、生乳買い入れ量を約21%増の76,000トンとしている。

 同国の農業・農村開発省は、昨年、農家の貧困解消を目的とした酪農開発の強
化を打ち出したが、中・北部諸県を中心とした生乳の増産対策しか考慮されてお
らず、国内市場の巨人であり、所管の異なるビナミルク社の取り扱いを含め、流
通・加工面での課題が残されている。

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