東ジャワに大規模乳業工場を建設(インドネシア)


新工場建設に苦しい経営の酪農家の期待

 インドネシアの地場資本としては食品産業最大手のインドフード・グループは、
1月中旬、東ジャワ州の州都スラバヤにほど近いパスルアンに3,500万米ドル
(約46億9千万円:1米ドル=134円)を投じて、生乳処理量が1日当たり500
トンと大規模な乳業工場を建設する計画を発表した。同工場の建設は、近々開始
される予定で、試験操業期間を含めての工期を約1年としており、2003年の早い
時期に本格操業を開始する予定であり、低乳価に苦しむ州内酪農家の期待を集め
ている。

 政府は、98年の通貨危機による経済の悪化を立て直すため、同年、国際通貨基
金(IMF)との間で融資に関する合意書を交わした。この合意に基づき、政府は
それまで国内の酪農産業の保護を目的として行ってきた価格政策や輸入制限措置
などの政策を撤廃しており、同国の酪農産業は国際競争の波にさらされることと
なった。また、ローカルコンテント(原料の一定割合を国産調達しなければなら
ない規則)制度も廃止されたため、乳業各社は輸入原材料への依存度を高めてい
る。


独占状態のネスレも乳価引き上げを決定

 東ジャワ州は、同国の生乳生産量約38万トンの5割以上に相当する約20万トン
を生産している。同州の生産者乳価は、乳業最大手のネスレ社と酪農協同組合
(GKSI)本部との交渉によって決定されている。今年に入って両者は、現行1リ
ットル当たり1,515ルピア(約21.7円:100ルピア=1.43円)の乳価を同1,771
ルピア(約25.3円)に引き上げることで一旦合意した。今回の引き上げの基礎
となったのは、豪州の乳価(1,482ルピア=約21.2円)に関税等相当分10%を
加算した1,667ルピア(約23.8円)を基準価格として、これに品質に係るプレミ
アを加算したものとなっている。乳固形分については、基準値を11.8%として
12%を超える場合のプレミアとして40ルピア(約0.6円)を加算するが、基準値
を下回る場合には最大40ルピア(約0.6円)のペナルティーが課せられる。また、
総菌数については、1ml当たりの基準値を300万個として100万個を下回る場合の
プレミアとしての100ルピア(約1.4円)を加算するが、基準値を上回る場合に
は最大150ルピア(約2.1円)のペナルティーが課せられる。


今回の決定ではほとんどの農家がペナルティー

 今回、プレミアの対象とされた品質基準は、生乳に関して定められた同国の国
家規格(INS:Indonesian National Standards)に基づくものだが、東ジャワ
州GKSIによれば、同州で生産される生乳のうち、この規格を満たしているものは
0.8%にすぎず、大半の酪農家は乳価引き上げの恩恵を額面どおりには受けるこ
とができない見込みである。同州で生産される生乳で最も問題なのは、搾乳後の
生乳ろ過用の布に由来するとみられる総菌数の多さであり、ほとんどの生乳の総
菌数は1ml当たり300万〜600万個と、今回の基準値の数倍に達している。また、
中部ジャワ、西ジャワ州の乳価契約では、総菌数の基準値は3,000万個で菌数が
これを上回る場合でもペナルティーは20ルピア(約0.3円)であり、今回の契約
は酪農家にとって厳しいものとなっている。

 このため、今回の合意内容が実施されれば、ほとんどの酪農家は期待したほど
の乳価が得られないばかりか、逆にペナルティーや受け入れ拒否を受ける可能性
も出ており、最近になって政府も合意内容の再交渉を求めている。

 州内の酪農家は、今回のインドフードの大規模乳業工場の新設により、現在の
ネスレ社の独占状態が崩れ、乳価引き上げがより現実的なものになることを期待
している。

元のページに戻る