2002年の農家経済予測、今後の政府補助金がカギ(米国)


現金所得、作物および畜産部門とも前年をわずかに上回る見込み

 米農務省(USDA)は先ごろ、2002年の農家経済予測を発表した。これによれば、
現金所得(Cash Receipt)は、作物および畜産部門ともに前年水準を上回るこ
とから、農産物全体では前年比1.2%増の2,043億ドル(約27兆3,762億円:1
ドル=134円)と予測されている。

 作物部門では、綿花やコメなどが前年を下回るものの、穀物類の価格上昇など
により、全体としては、前年比2.2%増の979億ドル(約13兆1,186億円)と予
想されている。

 一方、畜産部門の現金所得については、養豚、酪農が前年をそれぞれ4.2%お
よび9.2%下回るものの、肉牛およびブロイラーがそれぞれ3.1%および11.3
%増加することから、全体としては、前年をわずかに上回る1,064億ドル(約14
兆2,576億円)と見込まれている。

 作物部門の主な支出については、前年を1.6%下回ることが予測されている。
これは種子や農薬価格が若干値上がりする一方で、作付面積のわずかな減少や、
肥料価格の値下がりによるものである。また、USDAは、ここ数年の市場価格の低
迷に対応するために、より多くの生産者が投入コストの低減につながる生産方法
(精密農法、統合的な害虫管理など)を採用していることも、支出減少の一因で
あると指摘している。

 畜産関連の支出については、飼料費がトウモロコシ価格の値上がりにより、前
年を7%上回るものと見込まれている一方で、素畜費は昨年に引き続き、前年水
準を下回る(7%減)と予測されている。畜産部門での支出の大部分を占めるこ
れらの支出項目の合計では、前年を2.4%上回ることが見込まれている。


政府補助金収入の減少見込みで、全農産物の純現金所得は94年以来最低水準に

 農産物全体の純現金所得(Net Cash Income)は、前年比14.5%減の509億ド
ル(約6兆8,206億円)と予想されており、94年以来最低の水準となる。この要
因としては、政府補助金からの収入を前年の約半分程度と見込んでいることが大
きい。昨年は211億ドル(約2兆8,274億円)が支出され、そのうち約91億ドル
(約1兆2,194億円)が、新たな立法措置により実施された緊急農家支援措置に
関するものであった。今回の予測では、緊急措置に当たる部分の扱いは未定であ
るため、既存の制度のみが前提とされた。なお、既存の制度下では、作物価格の
値上がりにより、ローン不足払い制度に基づく支出が減少すると予想されている。

 政府補助金の減少については、粗現金所得(Gross Cash Income)に占める政
府補助金の割合の大きい小麦(30%)、トウモロコシおよび大豆(20%)などの
専業農家が最も大きな影響を受けるものとみられる。


政府補助金の動向を左右する次期農業法案の議論の進ちょくは依然不透明

 こうした政府補助金の動向が、今年の農業所得にも大きな影響を与えることは
間違いないが、その動向を左右する次期農業法案の議論の進ちょくは、依然とし
て不透明なままである。ブッシュ政権は、大統領自らが1月30日の議会指導者と
の会談で「次期農業法を片付ける時が来ている」と述べ、議会での速やかな成立
に向けた動きを促した。一方、上院の関係者によれば、上院多数党の指導部は、
景気対策関連法案が終了次第、次期農業法案の審議を再開したいとの意向を有し
ている。しかし、昨年末の審議でも明らかなように、同法案をめぐる両党の溝は
深く、今後も予断を許さない。

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