◇絵でみる需給動向◇
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、肉牛および羊牧産業の年次予測レポート 「Australian Cattle and Sheep Industry Projection」の2002年更新版を発表し た。 このレポートは、今年1月に発行された同名レポートを1月から半年間経過した 時点で主要市場の動向の変化などを勘案し、再度予測を見直ししたものである。 今回の内容で、最も注目されているのは、昨年9月に確認された日本における牛 海綿状脳症(BSE)による、豪州肉牛産業への影響である。そのほか、干ばつの拡 大、豪ドル高、米国向け輸出枠の新管理制度の施行遅延による影響を考慮した内 容となっている。
日本向け(クインズランド州産)の平均枝肉価格は、2000年11月以降、値上が り傾向にあったが、昨年9月をピークに値を下げ、2002年6月には1キログラム当た り240.3豪セント(約166円:1豪ドル=69円)と、9月と比較すると37%低下した。 しかしながら、昨年は価格が高水準で推移したこともあり、記録的な下落ではな く、生産者の利益は確保されるレベルにあるとされている。価格下落の要因とし ては、干ばつの拡大に加え、日本向け輸出の減少が大きい。2002年の上半期の日 本向け輸出量は、数量ベースで前年同期比44%減、金額ベースでは同50%減と推 計されている。BSE確認以前は、金額ベースでは日本が最大のマーケットだっただ けに、このような輸出の減少は、豪州のすべての肉牛部門に大きな打撃を与えた。 こうしたことから、数量ベースに加えて、金額ベースでも米国が最大の輸出先と なった。 ◇図:枝肉価格の推移◇
2002年通年の輸出量は、韓国、カナダ向けは伸びが見込まれているものの、日 本向けの輸出不調が響き、2002年当初の予想であった98万トンから、前年比1%増 の96万トンへと下方修正した。そのほかに下方修正の要因としては、2002年上半 期においては、米国の肉牛価格の下落による輸出の不調、アルゼンチン、ブラジ ルの通貨状況を反映した南米産牛肉の輸出価格の低下によるアジア市場での競合 激化、豪ドルの上昇、米国向け輸出枠の新管理制度の遅延などが挙げられる。 なお、今年後半の見通しは、干ばつの影響がなければ、安定した牛肉生産が期 待でき、緩やかではあるが国内市場価格は回復するとされている。輸出について は、日本の牛肉需要がカギを握る一方、米国の肉牛価格の上昇が期待できるため 増加が見込まれている。 一方、牛肉輸出の不調と相反して前向きな見通しの1つとして、その影響により、 一昨年来上昇基調にあった牛肉の国内小売販売価格も下降基調となったことから、 それまで毎年、減少し続けていた国民1人当たりの牛肉消費量が前年と比べて2.6 キログラム増加し、36.8キログラムになるとされている。 ◇図:国別輸出量の推移◇
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