◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は2002年6月、EU15ヵ国における主要畜産物の需給に関する中期見通し を発表した。前月号では、予測の前提条件と生乳生産の需給予測について紹介し たが、本号ではチーズとバターの需給予測について取り上げる。
EU委員会によると、2009年までのチーズ生産は、安定的な域内需要と前号で述 べたクオータ枠の増加に伴う生乳生産の増加により、年平均で0.9%と緩やかな増 加傾向で推移し、2009年には2001年と比べて6.8%増になると予測している。2009 年までの中期的な域内消費量の動向についても、年平均で0.9%の増加となり、こ れまでの増加率と比べると緩やかになるものの、増加傾向で推移すると予測して いる。一方、輸出量は、98年には主要な輸出先であるロシアの経済危機を背景と して大幅に減少したものの、2000年には回復に転じた。その後2004年までは前年 比▲1.9〜2.6%の間で比較的安定して推移するものの、2005年にはクオータによ る生乳生産の増加が一時的な増加をもたらすとみられている。しかし、2006年以 降は、域内消費量の増加率が生産量の増加率を上率回り、域内への仕向け量が増 加することから、輸出量は減少すると予測されている。 チーズの需給動向 (単位:千トン) 資料:EU委員会 注:輸出入量は、域外との貿易量
バターの生産量は90年代後半から減少傾向にあるが、2009年の生産量は2001年 と比較して6.7%減と、減少傾向が続くことが予測されている。その要因としては、 EUにおけるバター消費量の減少が挙げられる。近年、消費量は回復の兆しを見せ、 2000年から2年連続で増加した。しかし、バターの域内消費量の30%が、バター を使用した加工食品に対する助成など何らかの補助金によって支えられており、 今後はこれらの補助金の削減が予測されることや、バター需要が本格的に回復し たとは言えないことから、2009年までの消費量は、2001年と比較して2.9%減とわ ずかに減少すると予測される。消費量減少が予測されているにもかかわらず、EU の域外からのバター輸入量は、市場アクセスの増加とEU加盟候補国である中東欧 10ヵ国とのダブル・ゼロ合意(輸入に係る関税、輸出補助金を相互撤廃)による 伸びが予測されている。一方、域外向けの輸出量は、2004、2005年をピークに、 それ以降は減少傾向が予測されている。国際市場におけるバターの貿易量は増加 を予測しているものの、その大部分が発展途上国向けで、安価なオセアニア産バ ターが多くを占めているため、EU産バターの国際市場に占めるシェアは減少する ことが予測される。 バターの需給動向 (単位:千トン) 資料:EU委員会 注:輸出入量は、域外との貿易量
脱脂粉乳については、タイトな需給状況により、2000年から2001年中頃にかけ て国際価格、域内価格ともに上昇した。しかし、この価格の上昇は生産に影響せ ず、90年代後半からの長期的な減産傾向が続くと見込まれている。2009年の生産 量は、飼料用脱脂粉乳の需要の減少などから、2001年と比較して19.9%減と大幅 な減少が予測されている。消費量のうち、食用については、2004年にかけて減少 するものの、2006年以降増加に転じると予測されている。一方、飼料用について は、2005年までは増加、その後減少すると予測されている。これまでは、子牛生 産の減少に伴い、飼料用脱脂粉乳の消費量も減少していたが、子牛生産の回復が 見込まれることから、2005年までは飼料用が増加するとみられる。脱脂粉乳消費 量のうち飼料用が占める割合は、91年には70%であったのに対し、その他の飼料 価格の下落を要因に2000年には50%にまで減少しており、今後もこの傾向は続く と予測されている 脱脂粉乳の需給動向 (単位:千トン) 資料:EU委員会 注 1:生産量にはバターミルクパウダーを含む 注 2:輸出入量は、域外との貿易量
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