◇絵でみる需給動向◇
イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、スペイン、ルクセンブルク、ベルギ ーを除くEU12カ国の2002年上半期のと畜頭数は、7,558万5,300頭で前年同期と比 べて1.2%増とわずかに増加した。EUにおける豚肉の生産量は、90年代後半は、比 較的好調な需要により増加傾向で推移してきたが、2000年にイギリスで発生した 豚コレラ、2001年にはイギリスのみならずEU各地で発生した口蹄疫の影響を受け、 2001年のと畜頭数は前年と比べて1.4%の減少を示していた。 国別と畜頭数(2002年上半期) (単位:千頭、%) 資料:MLC 注 1:EU12カ国のと畜頭数は、各国の足し上げ 注 2:ポルトガルを除く
2002年上半期のと畜頭数を国別に見ると、豚肉生産の上位3カ国であるドイツ、 スペイン(1〜5月)、フランスは、それぞれ1%未満の増減率で、前年同期からほ ぼ横ばいである。EU全体としての豚肉生産が安定的に推移しているのは、EU全体 のシェアの約53%を占めるこれらの主要生産国からの出荷が安定していることに よると言える。上位3カ国に次ぐデンマークの2002年上半期のと畜頭数は、前年同 期比6.0%の増加を示した。デンマークは、家畜疾病の影響を受けず、2001年も2 002年と同程度の伸び率を示していた。しかしながら、2002年8月に日本の関税の 緊急措置が発動されたことによる需要減少により、今後のデンマークのと畜頭数 が減少する可能性もある。また、口蹄疫の発生により2001年に大幅な減少を示し たオランダは、前年同期比6.0%増とかなり増加した。しかし、2000年と比べると 17.0%減と回復するには至っていない。
このようにEU全体の豚肉生産が比較的安定して推移する中、域内の豚肉価格は、 2002年に入ってからの供給増加や2001年以降の需要が弱まったことから低迷して いる。EUにおける2002年9月の豚枝肉価格(市場参考価格)は、前年同月比16.0% 減の100キログラム当たり136.1ユーロ(約16,604円:1ユーロ=122円)と大幅に 低下している。さらに牛海綿状脳症(BSE)の影響で落ち込んだ牛肉消費が増加す れば、今後の豚肉需要はさらに弱まり、今後のと畜頭数に影響が出る可能性があ る。 ◇図:豚肉卸売価格の推移◇
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