第2回口蹄疫ワクチン接種キャンペーンを開始 ● アルゼンチン



ワクチン接種費用は、生産者負担に

 アルゼンチンでは口蹄疫撲滅のため、2002年8月から第2回口蹄疫ワクチン接種
キャンペーンが始まっており、おおよそ12月中旬に全頭接種が終了する見込みで
ある。しかしながら、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)は、2001年4月
のキャンペーンから実施してきたワクチンの無料配布を購入資金不足のため、今
回のキャンペーンから取りやめた。これにより、口蹄疫の再発を懸念する声が高
まっている。

 90年代からSENASA管理の下、全国に約300ある生産者団体等がワクチン接種を実
行してきた。おおよそ牛20万頭ごとに地域の畜産に造詣の深いコーディネーター
(獣医師が就任)1人とワクチン接種技術者8人が実行部隊として組織されている。
また実行部隊の他には、接種計画の立案や管理などを行う委員会がある。SENASA
には、この生産者団体がワクチン接種の進ちょく状況を報告することになってい
る。ちなみに、ワクチン接種実施の注意事項として、アルゼンチンでは、牛の移
動が許可されるのは、ワクチン接種後180日間であるため、その有効期限が間近に
迫った農場や牛群から接種することがある。

 今回のキャンペーンからワクチン代金と接種経費は生産者が負担することにな
り、ワクチン代金の決済に要する日数で代金は多少異なるものの、生産者団体ま
での送料込みでおおよそ1投与当たり0.31ドル(約38円:1ドル=124円)で供給さ
れることになった。これに伴い、生産者が負担する額は1頭当たり1.8ペソ(約59
円:1ペソ=33円)前後となっている。生産者が負担する経費には、ワクチン代金、
ワクチン接種経費、事務運営費、小規模生産者の経費回収不能分、SENASAへの分
担金、ワクチン代金納入遅延を想定した利子分などが含まれる。また、生産者団
体によっては、将来実施されるであろうブルセラ病撲滅対策費を上乗せしている
ところもある。

ワクチン製造の独占化をめぐる問題点

 去る8月15日に農牧水産食糧庁のデルペッチ長官が辞任した理由の1つに、口蹄
疫ワクチン接種体制を改正しようとしたことが挙げられている。90年代前半まで
は獣医師が口蹄疫ワクチンを製造会社から購入して生産者団体に配布していた。
しかし、90年代後半からワクチン製造会社との交渉力が強い生産者団体が直接購
入する形態に変更された。デルペッチ前長官はアルゼンチンに1社しかない製造会
社から生産者団体が購入する現行制度を改め、以前獣医師が購入していたような
個人についても自由に購入できるシステムとすべきであるとしたが、生産者団体
は、個人では巨大な製造会社と交渉ができる訳がなく、製造会社が提示する価格
になってしまうことを恐れた。生産者の間では、ワクチン接種に係る生産者負担
のメルクマールとして、去勢牛生体1キログラム当たりの価格が妥当だと考えられ
ていたが、価格交渉の結果、ワクチン代金が抑えられ、生産者負担は1.8ペソ前後
となり、8月時点の去勢牛生体1キログラム当たり価格、約2ペソ(約66円)を下回
ったことから、現行制度は生産者にとって有利に働いたことになった。

 しかしながら、現在、ワクチン製造がビオヘネシス社1社のみの独占となってい
る問題が解決されたわけではない。SENASAには、現在他に3社がワクチン製造許可
を申請中であり、2003年上半期にはそのうちの2社であるルタセイス社、サニダッ
ドガナデラ研究所が許可される見込みであるが、それでもビオヘネシス社のシェ
アは80%を下らないであろうと関係者の間では推測されている。

小規模生産者からはワクチン接種の継続を疑問視する声も

 こうした中、ブラジルで開催されたメルコスル農業協会連盟(FARM)の会議で
は、「メルコスル地域内のいずれの国も他の加盟国の承認なしにワクチン接種を
中止することのないよう、それぞれの政府に連携するよう働きかけること」が決
議された。

 アルゼンチンにおける口蹄疫ワクチンの接種中止という事態はひとまず避けら
れたように見えるが、99年に口蹄疫ワクチン接種を中止した時点よりもウイルス
活性は低く、家畜衛生に対する意識の低い小規模生産者からはワクチン接種の継
続を疑問視する声も挙がっていることから、第2回ワクチン接種キャンペーンが無
事終了するか注目されるところである。


元のページに戻る