豪州の豚肉輸出依然好調



2002年8月の豚肉輸出量、前年同月比12%増の5,512トン

 豪州統計局(ABS)の輸出統計によれば、2002年8月の豚肉輸出数量は前年同月
比12%増の5,512トン(船積ベース)、金額では2,420万豪ドル(約16億6,980万円
:1豪ドル=69円)となった。8月1日には、シンガポールに次ぐ豚肉の輸出先であ
る日本において、関税の緊急措置が発動され、輸出国である豪州にとって逆風と
なったが、今回のデータはいまだに順調な輸出が続いている結果を示した。

 このうちシンガポール向けは、数量で同0.1%減の2,681トン、金額では1,010万
豪ドル(約6億9,690万円)、日本向けは、数量で同54%増の1,561トン、金額では
1,090万豪ドル(約7億5,210万円)。単純に単価でみるとシンガポール向け1キロ
グラム当たり3.76豪ドル(約259円)に対し、日本向け1キログラム当たり6.98豪
ドル(約482円)となり、シンガポール向けは枝肉、日本向けは部分肉ということ
が単価から推察される。2ヵ国で8月の全体輸出量の約77%、輸出額の約87%を占
めており、豪州の豚肉輸出の大宗を占めている。

輸出目的の系統造成による品種改良で、枝肉重量増加

 一方、と畜頭数は2002年7月には前年同月比17%増の50万5,600頭、豚肉生産量
も同15%増の3万7,028トン(温と体枝肉ベース)となった。平均枝肉重量で見る
と、ニューサウスウェールズ州とクインズランド州では75キログラムを超えてお
り、その他の州の平均60〜70キログラムを大きく上回っている。かねてより豪州
産豚肉の不評要因の1つであった、小ぶりな枝肉重量の問題も大手インテグレータ
ーが集中する2州では、輸出に向けて系統造成による改良が進んでいることが分か
る。

 豪州の養豚産業は、生産者数2,543戸、年間豚肉生産量約40万トン(温と体枝肉
ベース)と日本の豚肉生産量の3割程度にすぎない。かつては生産構造も自国での
生産、消費の完結型であった。

豪州産豚肉、シンガポールでの地位獲得に成功、対日輸出も増加

 豪州では、96年に外国からの豚肉輸入が自由化されたことに伴い、国内産に比
べ安価な加工原料向けのカナダやデンマーク産の豚肉が一気に輸入された。豪州
にはこの結果、国内価格が急落し生産者が大きな打撃を受け、国内産業が危機に
瀕した苦い経験がある。

 政府は、国内の生産者救済のため、生産団体の統廃合による業界の基盤強化や
輸出振興に異例の補助金を投入し、産業の建て直しを図った。

 また、マレーシアで発生したニパウイルスによりマレーシアからの豚肉の供給
を断たれたシンガポールをターゲットとして「エアポーク」と銘打った積極的な
販売促進活動を行い、シンガポールにおける豪州産豚肉の地位を獲得することに
成功した。

 さらに、日本においても、豚肉の供給国であった台湾、韓国で相次ぎ発生した
口蹄疫の影響により、それらに代わる供給地の1つとして日本向け輸出量も増加し
ている。

 APLでは、昨年11月に豪州豚肉産業へさらなる利益をもたらす戦略計画を発表
し、輸出市場の拡大、生産コストの動向調査、家畜衛生条件や製品の品質の向上
に取り組んでいる。また、「セーフポーク」と呼ばれる新しい危機管理マニュア
ルの策定など、その対応に余念がない。

 豚肉輸出量の推移(日本・シンガポール向け)

 資料:ABS
  注:船積みベース


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