2002、3年における中国の牛肉の需給動向について
米農務省海外農業局(USDA/FAS)は先ごろ、中国の今年から来年にかけての牛
肉の需給動向に関する報告書を発表した。その概要は次の通りである。
生産の伸びは減速気味、品種改良や粗飼料不足などの問題点
2002年の年初の牛飼養頭数は、前年同月比0.3%減の1億2,824万頭となり、ここ
20年来で初めて前年水準を下回った。この要因としては、中国における飼養牛の
大部分を占める役牛の頭数が減少していることが挙げられる。乳牛頭数は、乳製
品需要の伸びを反映して、急速に増加しているものの、役牛の減少分を補うこと
はできなかった。
一方、2002年および2003年の牛肉生産量は、それぞれ2.0%および1.8%の増加
が予想されている。しかし、伸び率はこのところ減速気味であり、こうした傾向
は今後も継続するものとみられている。
中国の肉牛部門の成長を阻む要因としては、まず、品種改良の遅れが挙げられ
る。乳牛の品種改良が官民を挙げて急速に進められているのに対して、肉牛は主
として政府のみが実施しており、資金と経験の不足といった問題も指摘されてい
る。さらに、粗飼料の不足も要因の1つとされる。中国では人口が多いため、牛の
粗飼料よりも、人間用の作物を栽培した方が、生産者にとっては有利であること
から、粗飼料栽培の拡大が進まないといった背景もあるようだ。
最近需要が増大しているハンバーガー用などには、国内の乳廃牛や品種改良の
行われていない中国原産牛から得られた低品質の牛肉が利用されているが、高品
質の牛肉については、輸入に頼らざるを得ない状況にあり、品種改良などの経済
性を考慮すると、今後もそうした傾向は、さらに強まっていくものと予想される。
着実に伸びる消費、最も見込みがあるのは「鍋」
牛肉の消費量は、所得の伸びを反映して着実に拡大しており、2002年は前年比
2.4%増の557万6千トン(枝肉重量ベース。以下同じ)、2003年は同1.8%増の56
7万8千トンと予想されている。最近ファストフードでの需要が伸びているものの、
全体の消費量から見れば、依然としてほんの一部を占めているに過ぎない。これ
に対し、最も重要な部分を占めているのが、中国の伝統的な食事の1つである「鍋
(hot pot)」で、将来的にも最も見込みのある分野と目されている。なお、鍋に
使用される牛肉は、脂肪交雑(サシ)が豊富で、柔らかいものが好まれており、
今後の牛肉消費においては、品質面でも要求が高まっていくものと考えられる。
一方、胃、腱などの副産物も人気が高く、今後の伸びが予想されている。
価格は堅調に推移する見込み
牛肉価格は、前述のとおり、生産の伸びが鈍化する一方で、需要は経済成長を
背景に着実に拡大していることから、強含みで推移している。2002年6月の牛肉小
売価格(中国農業部調べ・全国平均)は、前年同月比25.0%の増加となっており、
来年以降にかけても、価格は堅調に推移するものと予想されている。
輸入は需要の増加や関税引き下げで増加
2002年の牛肉輸入量は、前年比44.4%増の2万6千トン、2003年については同7.
8%増の2万8千トンと予想されている。増加の背景としては、需要の拡大、関税の
引き下げおよびこれに伴う密輸の減少などが挙げられる。関税については、2002
年には前年の39.0%から25.0%に引き下げられ、翌年にはさらに18.6%まで削減
されることとなっている。輸入アイテムとして人気があるのは、低級部位であり
ながら、鍋に使用されるチャックロール(カタ)やショートプレート(バラ)で
ある。一方、最近ではロイン系の高級部位の需要も増加しているという。
一方、2002年の輸出量は、前年比16.7%減の5万トン、2003年については前年同
と見込まれる。2002年の減少は、中国産食肉に対する安全性への懸念が背景にあ
ると指摘されている。
中国の牛肉需給
資料:米農務省海外農業局(USDA/FAS)
注 1:枝肉重量ベース
注 2:2002年及び2003年は予想値
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