◇絵でみる需給動向◇
イギリス食肉委員会(MLC)によると、2001年におけるEUの域外向け牛肉(生体 牛および調整品を含む)輸出量は、前年比18.5%減の52万9,400トン(枝肉重量ベ ース、速報値。以下同じ)となり、87年以降最低となった2000年をさらに大きく 下回った。2000年の牛肉輸出量は、年後半に牛海綿状脳症(BSE)問題によりEU産 牛肉に対する不安が拡大したことで多くの国がEU産牛肉の輸入禁止措置を取った ため、2000年には前年比32.4%の減少を示した。2001年も引き続き減少し、87年 以降、輸出量の最低記録を更新した。2001年の大幅な減少要因としては、前年の BSEの影響が続いたことと、2001年前半にイギリスやオランダ、フランス、アイル ランドで発生した口蹄疫の影響が挙げられる。 ◇図:EUの域外牛肉輸出量の推移◇
2001年の牛肉輸出を国別に見ると、ドイツが前年比76.0%増の25万6,500トンと 大きく増加させた一方で、2000年に最大の輸出国であったアイルランドは前年比 77.6%減の5万6,400トンとなった。ドイツの大幅増は、EU域内の牛肉需要低迷に より輸出価格が比較的安値であったため、ロシア向けを中心に輸出が伸びたこと によるものである。また、アイルランドからの輸出量が大幅に減少したのは、口 蹄疫の発生により輸出ができなくなったことが要因である。域外向けの輸出量に 占める国別のシェアは、ドイツが前年の22.4%から48.5%へと約半分にまで拡大 しており、アイルランドが前年の38.8%から10.7%へと大きく縮小した。 また、輸出相手国は、ドイツの主要輸出国であるロシア、口蹄疫の影響は受け たもののアイルランドとの取引量が多いエジプト、その他にはレバノン、北朝鮮 などとなっている。 EU各国別の域外への輸出量 (単位:千トン、%)
一方、2001年におけるEUの域外からの輸入量も、前年比8.8%減の37万6,100ト ンと減少した。国別には、2000年と同様にブラジルが最大となっており、前年比 10.1%増の21万6,100トンとなった。これに対して2002年に第2の輸入相手国であ ったアルゼンチンが3万5,100トン、前年比55.7%と大幅に減少した。これは、口 蹄疫の発生のためEUへの輸入が禁止されたことによるものである。これに対し、 ブラジルの輸出増は、アルゼンチン産牛肉の代替需要の増加によるものとみられ る。 EUは、2002年にはアルゼンチン産牛肉の輸入を再開、ブラジルもトレーサビリ ティーの確立を目指すなどEU向けの輸出を意識した取り組みを行っていることか ら、2002年の輸入量は前年よりも増加する可能性が高い。 EU域外からの牛肉輸入量 (単位:千トン、%)
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