世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○値上がりする米国のトウモロコシ価格




● ● ● 2002年7月は98年3月以来の高値 ● ● ●

 米国のトウモロコシ価格(シカゴ相場の先物、期近価格、当月最終取引日の終
値)は、昨年10月以降、前年同月を下回って推移したが、今年の5月からは前年同
月を上回る動きに転じている。2002年7月については、前年同月比12.8%高の2ド
ル47セントとなり、ここ数年で最も高い価格となった。

◇図:米国のトウモロコシ価格(シカゴ相場、先物、期近価格)の推移◇


● ● ● 背景に中西部などでの干ばつ、悪化する生育状況 ● ● ●

 このような高値の背景として、トウモロコシの主要生産地であるコーンベルト
を含む中西部などでの干ばつの発生が挙げられる。例えば、8月9日付けのウォー
ルストリート・ジャーナル紙によれば、イリノイ州、インディアナ州およびオハ
イオ州の7月と8月初旬における降水量は、通常の4分の1以下であったという。ち
なみに、2001年のトウモロコシ生産量でイリノイ州は全米第2位、インディアナ州
は第4位、オハイオ州は第6位であった。

 こうした状況から、トウモロコシの生育状況も悪化しており、8月5日にUSDAが
公表した主要18州の生育状況報告では、「優良(Excellent)」と「良(Good)」
の合計が全体の41%となり、約1ヵ月前との比較では12ポイント、さらに前年同時
期との比較では、19ポイントのマイナスを記録した。


● ● ● 生産量の引き下げの程度が注目されるUSDAの予測 ● ● ●

 USDAは7月に、6月末に公表した作付け動向調査の結果に基づき、需給予測を発
表した。生産量の予測については、過去の単位当たり収量の傾向から推計した数
値を利用しており、今年度のトウモロコシ生産量を97億9千万ブッシェル(約2億
4千8百万トン)と予想していた。8月中旬に発表される予測では、USDAが生産者に
対する聞き取り調査などを行うことから、現在の干ばつの影響などの実態が単位
当たり収量の推計に織り込まれることになる。その結果、USDAがどの程度、前回
の予測数量を引き下げるのか、関係者から強い注目を浴びている。なお、これに
先立ち、民間の農業コンサルタント会社であるスパークス社は、90億ブッシェル
(約2億2千9百万トン)を下回る予測を発表した。


● ● ● トウモロコシ価格上昇の畜産への影響 ● ● ●

 トウモロコシ価格の値上がりについては、養豚やブロイラー生産の経営体への
飼料コスト増による悪影響が懸念され始めている。一方で、肉牛のフィードロッ
ト経営体については、飼料穀物価格の値上がり時には、一般的に、肥育期間を短
縮し、肥育牛をより軽い重量で出荷することから、牛肉生産量自体が減少し、結
果的に肥育牛価格の上昇につながるとして、楽観的に見る向きもある。このとこ
ろ、肉牛がフィードロットで安価な飼料穀物を利用して、より長期間肥育される
傾向にあったことから、と畜向け肥育牛はより重量化し、牛肉生産量増加の要因
となっていた。



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