輸出が再開するも肉牛価格は大幅に低下   ● ウルグアイ




上半期輸出量は前年同期比31.1%の大幅増

 ウルグアイ国立食肉院(INAC)によると、2002年上半期(1〜6月)の牛肉輸出
量(冷蔵・冷凍肉および加工肉)は、前年同期比31.1%増の14万3千トン(枝肉ベ
ース。以下同じ)となったが、1トン当たりの平均輸出価格が18.4%安の1,077ド
ル(約13万円:1ドル=約121円)となったことから、輸出額(FOBベース)は、1
億5千4百万ドル(約181億7千万円)と7.0%の増加にとどまった。

 主要な輸出相手先を見ると、EU向けが94.6%増の4万トン、イスラエル向けが3
9.1%増の2万8千トン、南米南部共同市場(メルコスル)向けが26.9%増の2万5千
トンとなっており、これらの国または地域で全輸出量の約65%を占めている。ま
た、アルジェリア向けが約14倍の1万1千トン、これまで輸出実績がわずかであっ
たエジプト向け、ロシア向けがそれぞれ1万1千トン、7千トンとなり、新興市場へ
の輸出も大きく伸びた。

 ウルグアイでは2001年4月23日、同国西部のソリアノ県で口蹄疫の発生が確認さ
れた後、主要な牛肉(冷蔵・冷凍肉)輸出先であるEU、米国、カナダ、イスラエ
ルなどが輸入を停止した。しかし、ワクチン接種などによる口蹄疫撲滅対策が功
を奏し、同年8月21日を最後に新たな発生が確認されなかったことなどから、EUは
同年11月1日以降にと畜処理されたウルグアイ産牛肉(骨なし熟成肉)の輸入を解
禁した。米国、カナダなどは現在も停止しているが、これまでにイスラエル、エ
ジプト、アルジェリア、ペルー、ロシア、チリなどが条件付きでウルグアイ産牛
肉輸入停止措置を解除している。


と畜頭数の増加、アルゼンチンとの競合などから輸出価格は下落

 こうした輸出の再開に伴い、2002年上半期の牛肉輸出は堅調に推移したものの、
輸出価格の下落が顕著となっている。この下落要因としては、@口蹄疫発生によ
る家畜移動制限措置が解除されたことなどから、2002年上半期の牛と畜頭数が前
年同期比25.8%増の94万頭となったこと、A2002年1月に通貨切り下げを実施した
アルゼンチンの輸出競争力が強まったこと、B米国やカナダなどのNAFTAが輸入を
停止する中、購買力の低い新興市場への輸出が増加したことなどが挙げられる。

 ウルグアイ牛肉産業は、牛肉生産量の約6割を輸出に向ける輸出依存型の構造と
なっており、輸出動向は国内の生体牛価格に大きく影響する。2002年6月の生体1
キログラム当たりの去勢牛平均取引価格は、前年同期比で19.1%安の0.53ドル(
約64円)となっている。また、口蹄疫発生以前の2000年同期と比べると、34.6%
安となった。


変動相場制への移行により輸出競争力を確保

 ウルグアイは92年から、通貨ペソの対ドル相場の切り下げ率をあらかじめ決め
た上で一定の変動幅の範囲内に誘導するクローリングペッグ制を採用していたが
、同国政府は今年6月20日、変動相場制への移行を発表した。これは、隣国アルゼ
ンチンの経済危機の影響を避け、自国の輸出競争力を確保することが狙いとされ
るが、牛肉輸出競合国であるアルゼンチンやブラジルが通貨安を背景に競争力を
強める中で、変動相場制への移行がウルグアイ産牛肉の輸出競争力の回復に寄与
するか今後の動向が注目される。



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