ブラジル農務省、2002/03年度農業プランを発表
融資総額は前年比26.0%と大幅に増額
ブラジル農務省プラチニデモラエス農相は2002/03年度の農業プランを発表し
た(なお、今回の発表は概略であり、全体を詳細に網羅したプランは、後日公表
される)。この農業プランは、@農村に対する融資、A国家経済社会開発銀行の
資金による投資プログラム、B投資プログラムのまとめ(@およびAをまとめた
もの)、C2002/03年度の各作物ごとの最低保証価格の4項目からなる。
ブラジルの農業政策は、融資がその大部分を占め、@〜Bはすべて融資の説明
となっている。2002/03年度において生産者に提供される農業融資資金は、前年
度の147億レアル(約6,027億円、1レアル=41円)を28.9%上回る189億5千万レア
ル(約7,770億円)が準備され、期間内に返済された資金の再貸付けを合わせると
融資総額は前年度比26.0%増の216億7千万レアル(約8,885億円)になる。なお、
このうち162億7千万円(約6,671億)が8.75%の固定金利で融資されることになっ
ている。
今回、畜産に関連した新規の融資プログラムとしては、
@農畜産品に対して付加価値を求めアグロインダストリーの競争力向上を図る
農協開発プログラム(融資枠2億5千万レアル(約103億円)、1農協当たり2千
万レアル(約8億円)、償還期限12年、年利10.75%)、
Aブルセラ病および結核撲滅のため殺処分された家畜の補充に対する購入融資
プログラム(融資枠3千万レアル(約12億円)、限度額等は未定)がある。
このほか継続拡充されるものに、牛乳の冷却および輸送の近代化奨励プログラ
ム(新たに、サイロ建設が融資の対象)、劣化牧草地回復プログラム(新たに、
抜根、電気牧柵等が融資の対象)がある。
生産者団体、融資増額の少なさや固定金利の高さに不満を表明
また、直接の融資ではないが、養豚農家が食肉パッカー等から受け取った約束
手形または商業手形に対して、銀行が満期までの利子を差し引いて手形を買い取
る割引に低利の本農業融資の資金を活用することが認められた(なお、食肉パッ
カー等は銀行に対し、利子を手形の割引と同時に支払い、額面金額は手形の支払
い期限満了時に支払う)。これは、@豚肉の生産増加に対し、国内消費および輸
出が伴わず供給過剰を招き価格が低下傾向で推移しつつあること、Aトウモロコ
シの供給量減少による価格上昇、ドル高による大豆カスおよび輸入資材価格の上
昇による生産コストが増加していることで養豚経営が極めて困難な状況にあるた
め、養豚業界から何らかの打開策を求める要請に政府が応えたものである。本措
置により食肉パッカー等が低利のコストで製品を貯蔵し、市況が良い時に出荷が
できるとの考えから政府は、「生産者のみならず、養豚部門全体から見れば、価
格変動に対するリスクが減じられている。」と述べている。
この増額された農業プランを評価する声が聞かれる中、ブラジル農業連盟(CN
A)のサルヴォ会長は「融資額217億レアルは生産額が920億レアルに達する農畜産
業分野への融資としては、まだ不十分である。他の農業輸出国が生産者に提供す
る金額よりはるかに小さい上、年間8.75%の固定金利は4%以下である国際金利の
倍以上である。CNAは250億レアル、固定金利5.75%を提案していた。」と不満を
表明している。
トウモロコシの最低保証価格の引き上げなどで、増産を奨励
また、生産者に対し一定の収入を保証する最低保証価格が改定され、特にトウ
モロコシは州により最低価格は異なるものの、60キログラム当たり7.5〜10.5レア
ル(約308〜431円)と約18%〜28%引き上げられた。さらに農務省は、2002/03
年度のトウモロコシのオプション契約(農業者が生産物を、事前に決められた日
に決められた価格で政府に販売する権利を農業者に与える契約で、市況の価格が
政府との間で決められた価格より高いときには、プレミアム(契約時に支払った
契約金)の返還がないことを了承の上、市場へ販売することができる。)を500万
トンとし、第1回目の競売を7月19日に実施した。農相は競売に先立ち「収穫期の
市場価格を示し、生産者の決断を支援することができる。特に輸出の増大により
拡大しつつある養豚、養鶏部門のトウモロコシの需要を満たすため生産を続ける
よう奨励したい。」との声明を出し、トウモロコシ増産を助長しているが大豆生
産に関心がある生産者がどこまでこれらの取り組みに参加するか、今後注視され
るところである。
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