肉牛先物取引を開始 ● 豪 州
4年間の検討の末に実現
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、シドニー先物取引所(SFE)での肉牛先
物取引を今年8月13日から開始すると発表した。MLAは、98年から内部での検討を
重ね、実に4年の歳月を費やして実現にこぎつけた。
肉牛先物取引の概要は、以下のとおりとなる。
@ 取引は東部ヤングキャトル指標(EYCI)に基づき行われる。取引単位は、
枝肉重量5,000キログラム(1頭当たり200キログラムとして約25頭)とする。
EYCIは、クインズランド州、ニューサウスウエールズ州およびビクトリア
州の26ヵ所で開設される生体現物市場(セールヤード)における16の個別取
引カテゴリーの加重平均価格である。この指標に含まれるのは、去勢、未経
産、若齢牛の生体重200キログラム前後のものとされている。ちなみに現在、
この情報は全国家畜調査サービス(NLRS)により提供されている。
A 取引限月は、年間6月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)が設けられ、最
長18ヵ月先までの契約が可能である。
B 決済は、同意された先物価格と契約終了時点の価格の差額について現金で
行われる。
なお、電子化により、24時間の取引が可能とされている。
背景には干ばつなどによる価格の乱高下
食肉業界はMLAを通じ、SFEに対して肉牛先物取引の運営経費等として向こう5
年間で100万豪ドル(約6,700万円:1豪ドル=67円)の投資を行い、取引の手数
料収入による投資額の回収を見込んでいる。一方、SFEは商品の掲示、精算、配
当など、この市場に関する維持管理を行う。MLAに加えて業界大手のウエストフ
ァーマーズ社、エルダース社等もスポンサーに名を連ねている。
開設の背景として、より安定的な肉牛取引を求める業界関係者の声がある。豪
州の食肉産業は、フィードロットでの肉牛生産が増えてきているものの、草地で
の肉牛生産が主体であり、それらの6割を輸出するという基本構造を有している。
これにより、数年ごとの周期で訪れる干ばつや、輸出国の需給事情で幾度となく
価格の乱高下を招き、そのたびに生産者、フィードロット業者および食肉処理業
者がほんろうされている。
MLAによると現在、SFEにおいて、豪州産羊毛の生産量の約20%が取引されてお
り、肉牛先物市場においても今後セールヤードで生体現物取引される総頭数の最
低2%を取り扱うことを目標としたいとしている。
特にフィードロット業界で先物市場のメリットに大きな期待
MLAのブルックス社長は、豪州における肉牛先物市場の開設は価格的にも効果
的な保険を牛肉業界にもたらすとその期待のほどを述べている。
今年に入り、豪州では肥育素牛の価格が昨年と比較し1キログラム当たり50豪
セント(約33円)近くも下落しており、肉牛先物市場のメリットを容易に生かす
ことができるのは、素牛を導入してから半年以上肥育するフィードロット業界だ
と考えられている。しかし、フィードロットから出荷される最大の仕向け先は日
本であり、現在、日本への輸出が低調な状況で肉牛先物市場の取引が果たして活
発化するか今後に注目したい。
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