豚肉の輸出振興を開始 ● ミャンマー
政府主導の下、一般農家を対象に3元交配による生産性と品質の向上を目指す
ミャンマー畜水省は、外国種を用いた3元交配の普及により、豚肉の生産性と品
質の向上を図り、豚肉の輸出振興を行う意向であることを公表した。民間では、
すでに、地元資本のホンパン・グループが、中国雲南省に国境を接するシャン州
に肉豚50万頭規模の養豚基地を建設・整備中で、2008年にはフル稼働の見込みだ
が、政府の取り組みは遅れていた。
畜水省では、家畜改良・獣医局と牛乳・飼料公社が養豚関連の行政を担当して
おり、それぞれが種豚場を保有している。公社の種豚場では、タイを本拠とする
チャロン・ポカパン社(CP)の現地法人であるミャンマーCP社から寄贈された原
種豚を飼養しており、ランドレース、大ヨークシャー、デュロックの3元交配を行
い、肥育用素豚として外部に販売している。しかし、公社による肥育用素豚販売
は、退役軍人や退職公務員を対象とした福利厚生的な性格を有しており、一般農
家での養豚振興とは直接結びついていない。
一方、今回の家畜改良・獣医局による3元交配の普及推進の意向表明は、一般農
家を対象に輸出向け豚肉生産を振興し、農家の所得向上を目指したものとなって
いる。
同局の、ヤンゴン市内にある種豚場では、99年に日本と豪州から輸入されたラ
ンドレース、大ヨークシャー、デュロックの3品種の種豚を維持・増殖している。
この種豚場で生産された豚は、ヤンゴン市の北西約170キロメートル、バゴー管区
ダイク町に所在する同局の養豚場で3元交配され、農家へ供給される。同局によれ
ば、ダイク養豚場は、現在のところ国内最大規模の施設であり、収容規模は1万8
千頭、年間560トンの豚肉生産能力と同1万頭の肥育用素豚供給能力を有している。
農家の新たな収入源として中国向け輸出に期待、ただし加工施設の衛生面で懸念も
ミャンマーでは、約380万頭の豚が飼養されているが、商業規模での生産はほと
んど行われておらず、少頭数を庭先で放し飼いするか、簡易施設で飼養する方式
が中心であり、生産費に占める飼料費の割合が8割を超えるとされている。このよ
うな状況ではあるが、同国は、トウモロコシや油かす類などの飼料資源が豊富な
ため、豚肉の生産費は中国の半分程度とされており、中国の世界貿易機関(WTO)
加盟にともなう輸出機会の拡大に対する期待が高まっている。
同国の年間1人当たりの豚肉消費量は、2.4キログラムとなっており、日本の同
17.2キログラムに比較してもきわめて低い水準にある。同国では、豚肉は、鶏肉
の次に好まれており、重要なたんぱく源とされているが、長引く経済不振により
国民の購買力が高まらず、需要が伸び悩んでいる。政府は、特にシャン州などケ
シの栽培地帯に畜産を導入し、ケシに代わる農家の現金収入源として養豚を振興
したい考えだが、国内の購買力不足から、生産しても販売先の確保が難しいとい
う事情を抱えていた。家畜改良・獣医局では、中国への輸出によりこの問題が解
決できるとみており、今月中にも雲南省の援助による国境検疫所の改善計画をま
とめ、畜産物の輸出拡大に向けた体制整備を進める意向である。一方、同局の意
気込みとは裏腹に、と畜場や食肉処理場は未整備で、衛生条件は必ずしも十分と
は言えない状況にあり、豚肉輸出の障害となることが懸念されている。
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