マレーシア、豪州とハラル食品の管理協定を締結




認定・表示基準などの協定でハラル食品市場へ本格参入

 マレーシアと豪州はこのほど、イスラム教の教義にのっとって製造されるハラ
ル食品の生産や流通などの管理体制を整える共同作業に着手した。両国は、この
協力関係を世界的にも需要が増大しつつあるハラル食品市場への本格的な参入の
足掛かりにしたいとしている。

 マレーシアのラフィダ貿易産業大臣および豪州のベイル貿易大臣は7月28日、マ
レーシアのゲンティン・ハイランドにおいて、今後、両国間で取り進めるハラル
食品の認定・表示基準やマーケティングなどの取り扱いに関する協定にサインし
た。これは、マレーシアへの農畜産物の輸出やマレーシア国内に進出した豪州企
業のハラル食品の処理・加工過程をスムーズにすると共に、マレーシアが世界に
おけるハラル食品の生産および輸出のハブとなる青写真を描いたものである。マ
レーシアの試算によると、世界のハラル食品の市場規模は年間500億ドル(約6兆
500億円:1ドル=121円)に上り、今回の協定によって、両国間における官民レベ
ルの幅広い協力体制の促進が期待されるとしている。


豪州への検査員派遣、両国による新ブランド創設も計画発表

 また、7月29日にはクアラルンプールにおいて、「アグリビジネスにおける新た
な相互機会」という副題を冠した第7回マレーシア・豪州ビジネス会議が開催され
た。この席上で、マレーシアのエフェンディ農業大臣から、前述の協定を推し進
める第一歩として、イスラム教振興省が豪州の食品加工場に検査員を派遣する計
画などが明らかにされた。これによると、同省は、豪州国内のイスラム団体と提
携して、食肉加工場などがハラル基準を順守しているかを個別に審査するとして
いる。この基準を満たすとされた加工場では、製品に同省のロゴシールが添付さ
れ、将来的にはこの協定を通して両国によるハラル食品の新ブランドを創設する
計画も披露された。会議に同席したベイル貿易大臣も、両国の経済に大きな利益
をもたらすものとして、同プロジェクトの将来に期待したいとしている。


貿易や投資により強まる両国間の関係

 近年の両国関係は、好調な貿易の発展をテコにますます強まる傾向にある。マ
レーシアが豪州から輸入する主な品目は、畜産物や砂糖、小麦などの農産物やア
ルミなどの金属類といった一次産品であり、豪州のマレーシアからの主な輸入品
目は電化製品および原油となっている。なお、食料品に限って見ると、豪州はマ
レーシアにとって第一の輸入相手国である。

 ラフィダ貿易産業大臣発表によると、マレーシアの今年1〜5月の豪州との貿易
額は、前年同期比10.3%増の61億リンギ(約1,890億円:1リンギ=31円)と増加
基調にある。また、97年から今年5月までの期間に、豪州がマレーシアに対して行
った78件の製造業に関するプロジェクトへの投資額は5億2千万リンギ(約161億2
千万円)に達しており、こうした面からも両国間の協調路線は一層強まって行く
ものと思われる。


世界のハラル食品需給に影響も

 今回の例に限らず、イスラム教徒が多い東南アジア地域では、ハラル食品の需
要増大に対応する動きが目立ってきた。例えば、フィリピンでは、昨年5月に口蹄
疫のワクチン非接種清浄地域となったミンダナオ島を、将来的な輸出を視野に入
れたハラル食品の生産基地に育成していこうとする動きも見られる。今回、イス
ラム国家のマレーシアと農畜産物の一大供給国たる豪州が手を携えたことで、世
界のハラル食品の需給に影響を与える可能性もある。



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