米大手食肉パッカー、大規模な牛ひき肉の自主回収へ ● 米 国
自主回収量は過去2番目の規模
米農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)は7月19日、大手食肉パッカーである
コナグラ社が、腸管出血性大腸菌O157に汚染された疑いのある約1,900万ポンド(
約9千トン)のグラウンドビーフ(牛ひき肉)などを自主回収すると発表した。ベ
ネマン農務長官は会見の中で、自主回収量が過去2番目の水準となったのは、予防
的見地に立った慎重な対応の結果と述べるとともに、牛ひき肉を原料としたハン
バーガーパティを調理する際は、パティ中心部の温度が華氏160度(摂氏約71度)
以上になるよう十分な加熱処理が必要と注意を喚起した。
自主回収の発端は、6月中旬にFSISが行ったコロラド州の卸売業者に対する食肉
サンプリング検査において、O157が検出され、この製品がコナグラ社のコロラド
州の工場で製造されたものと判明したことによる。このため同社は、対象製品を
特定し、これらを自主回収することとした。これを受け、FSISは6月30日、同社が
5月31日に製造した35万4千ポンド(約160トン)のグラウンドビーフの自主回収を
行うと発表した。しかしながら、その後コロラド州などの6州で発生したO157によ
るとみられる食中毒は、同工場の製品が原因であると米疾病対策予防センター(
CDC)が発表したことから、同社は、予防的見地と安全性に対する姿勢を表すため、
4月12日から7月11日の間に製造されたグラウンドビーフとビーフトリミング(牛
ひき材)の一部を回収対象に追加し、今回2度目の自主回収の発表が行われたもの
である。
FSISは96年に食肉等の安全性を向上させるため、危害分析重要管理点監査(HA
CCP)システム導入の食肉等製造施設に対する義務付け(96年に規則改定)などに
より、O157やサルモネラ菌などによる食中毒の防止を図っている。結果として食
中毒の発生件数は減少傾向にあるものの、O157の発生件数は年間約6万件に上る。
USDAによる製品回収権限の強化を求める声も
FSISは食中毒などが発生した際の製品回収の手続きについて、次のように定め
ている。今回のコナグラ社に対する回収のランクは、対象製品が腸管出血性大腸
菌O157に関連したものであることから、後述のクラス・が適用されている。
1 食肉等製造施設は、製造過程において病原菌が混入した疑いなどがある場合、
HACCPシステムに基づき、発生場所や対象製品の特定を行うとともに、FSISに連
絡する。FSISは連邦食肉検査法(FMIA)に基づき病原菌の有無などを検査する。
2 FSISは検査結果などを基に、FSIS内の各部代表をメンバーとするリコール委員
会で製品回収のランク付けを次のとおり行う。
・クラスT:当該食品の摂取により深刻な病状を呈す、または死亡する可能
性がある場合(食肉では、加熱前の牛ひき肉内からO157が検出された時や、
調理済み製品からリステリア菌が検出された場合など)
・クラスU:当該食品の摂取により健康を害する可能性がある場合(例えば、
ソーセージの成分表示にアレルギー症状を引き起こす可能性のある原料が
入っているとの注記がなかった場合)
・クラスV:当該食品を摂取しても、健康を害することはないが、連邦規則
に基づく適切な成分表示がされていなかった場合
また、FSISは製品回収を消費者、小売業者、卸売業者のどの範囲までとする
かも検討する。
3 これらの結果を踏まえ、当該施設は、対象期間と製造番号などの特定などを行
うとともに、FSISに自主回収のプランを提出する。(回収に係るコストなどは、
すべて当該施設が負担)
4 これを受けFSISは、このプランに基づき、施設名、対象期間、製造番号などを
プレスリリースなどにより公表するとともに、適切な食肉の取扱方法などを周
知する。
同社製品による食中毒被害がさらに広がりを見せる中で、今回の製品回収をめ
ぐる一連の流れに関し、回収決定に至るまでに時間がかかり過ぎているとして、
上記のような自主回収という手法ではなく、USDAに回収命令を下す権限を与える
べきであるとの声や、決定までにUSDA側の手抜かりがなかったかどうかについて
の調査を求める声もあるなどしばらくは尾を引きそうな状況である。
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